毎日の勤務時間は約10時間

 サイデさんが社長を務める会社は、イラン大手のサマンバンクが出資している清掃会社兼人材派遣会社。ATMなどの精密機械から、看板やビルの外観清掃までを請け負っている。テヘランは前に述べたように大気汚染が深刻な社会問題になっており、建物などが汚れる頻度は他の都市と比べて高い。テヘランだけでもサイデさんのような会社は約50社あるのだそうで、需要が非常に高いと言えるのではないだろうか。

 サイデさんの勤務時間は、午前7時半から午後18時半まで。お昼休憩は30分から1時間。朝出社すると、メールのチェックや会社に届く新聞に目を通す。

清掃派遣会社の社長を務めるサイデさん
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 こちらはサイデさんの会社の社員の方々……。

サイデさんの従業員の方々
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 ご覧の通り、男性社員はネクタイを締めておらず、女性社員はみんなヘジャブという髪を覆うためのスカーフを身につけている。現体制下では、ネクタイは西洋文化の象徴とされ、不文律なことだとみなされており、ほとんどの人は着用しない。近年では、結婚式などにファッションとして身につけている人も多くいるが、政治家や外交官などは公式の場でネクタイを身につけることはない。

 また、髭を立派に生やした人を多く見かけるのは、髭を剃る行為もイスラム教では禁止されているためだ(切るのはOK)。日本であれば、清潔な印象を保つために髭を剃った方がいいと言われているが、所変わればである。

 イランはイスラム教(シーア派)を国教としているが、宗教観や信仰度はそれぞれの家族や個人単位によって全く異なる。ムスリムであっても、お祈りしない人もいれば、1日3回のお祈りを欠かさない人もいる。社員の中にはイスラムの規律を守って生活を送っている人もいるため、お祈り用の絨毯(じゅうたん)は会社にも常備してある。

 私が訪問させてもらったのはちょうどイランの年末に当たる3月中旬。3月21日に迎えるお正月に向けて、社員の方々は、年度末の仕事やクライアントやお世話になった方々へ送るプレゼントの梱包などで忙しそうだった。

サイデさんに大都会テヘランでの生活と仕事の様子を伺った。

Q: 日常生活で一番のストレスはなんでしょうか? やっぱり渋滞でしょうか?

A: いいえ、渋滞は毎日のことなのですっかり慣れました。仕事のストレスというのは特にありませんが、クライアントが我々の仕事に満足しなかったときが一番気を使います。

Q: 仕事が終わったあとの過ごし方を教えてください。会社の同僚たちと出かけたりしますか?

A: いいえ、仕事が終わったらすぐに帰宅して、家事や妻の食事の手伝いをします。会社では社長ですが、家では妻の部下です(笑)。 私たちは共働きの夫婦なので、家事はどちらかに多く負担がかからないように分担しています。

 会社の人と食事などに出かけるのは、誰かが誕生日や結婚などのお祝いのときだけで、普段は全くと言っていいほどありません。イランはイスラム教の国で、お酒を飲むことも禁じられていますから、他の国のように、飲み会などもありませんし、家族を非常に大切にする国民ですので、多くの人は家族と一緒に過ごしたいのです。私は趣味でイランの伝統楽器のサントゥルを習っているので、家に帰ると毎日30分くらい練習しています。

Q: 1日の中で大切な時間はどんなときですか?

A: 仕事の時間です。我々一人ひとりが社会を作る責任があるので、それに直結することをやることは大事なことをしているという実感が湧きます。

Q: 日常的にどのような情報をチェックしていますか? 新聞などは買いますか?

A: ニュースなどの情報は、CNNかBBC、またはネットでチェックしています。特に、法律関係は改正などがないか特に気にかけています。新聞は会社で取っている経済情報のものを取っているので、自分では購入しません。出社すると、必ずクライアントのサイトにアクセスして、相手の最新情報を把握するようにしています。

 こちらはサイデさんに頂いたイランの新年の手帳。イラン暦は3月21日を新年とし、毎月31日で12カ月ある。週末は木曜と金曜で、政府機関や一般企業は休みとなるが、自営業をしている人は、金曜日の1日しかお休みがないのだそう。ちなみに、今年は1397年の戌年で、イヤーカラーは紫である。お正月休みは約2週間あり、サイドさんは毎年実家のある中部の砂漠地帯、ヤズドへ里帰りしているそうだ。

会社でとっている新聞は、石油や鉱物、外交関係に特化したニュースが掲載されている
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今年は1397年。カレンダーの読み方は縦読みで、数字の表記もペルシャ語
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会社に常備してある、お祈り用の絨毯
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仕事終わりに毎日欠かさず練習しているイランの伝統楽器“サントゥル”
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