中東の大国イラン。その首都テヘランは、標高1000~1800メートルの高地に位置し、かつては北部で暮らす人びとの避暑地だった。冬の空気が澄んでいる日であれば、市内からくっきりとアルボルズ山脈の雪山が望まれ、多くの人がスキーリゾートへ足を運ぶ。

 テヘランは人口1000万人を超える大都会。私の肌感覚では、東京よりも規模の大きい都会なのではないかと思う。大気汚染が深刻な問題となるほどの車社会で、市内を走っていると渋滞に遭遇しない日はない。この大都会テヘランで働くサラリーマンは一体どんな暮らしを送っているのか。現地の家庭で生活を体験する“定住旅行”をさせてもらった、テヘランの家族、エマミ家の主人サイデさんの1日を追ってみた。

タクシー通勤がポピュラーなテヘラン

 イランの学校や仕事が始まる時間は日本と比べて早く、学校は7時から、会社は大体7時半から始まる。サイデさんは毎朝6時には家を出るが、そのとき街はすでに通勤ラッシュで、大渋滞が起こっている。サイデさんの通勤時間は往復約3時間半。車を持っているが、奥さんと日替わりで使用しているため、車通勤でない日は、タクシーで通勤している。

テヘランの渋滞は朝6時頃からピークを迎える
[画像のクリックで拡大表示]

 テヘラン市内には地下鉄も通っているが、7路線しかなく区間も限られているため、東京のようにどこへでも自由に行けるわけではない。多くの人はタクシー通勤をするのが主流である。石油が採れる国ならではのメリットでもあるだろう。

 地下鉄は乗車区間によって金額が変わるが、PASMOのようなカードを持っていれば、半額で乗車でき、大体1回の乗車が5~10円。男女混合の車両と女性専用車両に分かれているが、女性はほとんどの人が専用車両に乗っている。車内では売り子たちが食材やアクセサリー、下着や雑貨などを満員電車の中でも人を押しのけながら売りに歩いている。買い物をする時間のない人たちは、乗車中に済ませようとするため、品物はどんどん売れていく。イランではどこでもバザールが繰り広げられているのだと初めて見たときは感心した。

イラン人はとてもフレンドリーで、地下鉄に乗っていると色んな人が話しかけてくる
[画像のクリックで拡大表示]

 サイデさんのようにタクシーで通勤していたらとんでもない金額になるような気がするが、大体のタクシーは乗り合いでき、またプライベートで乗ったとしてもべらぼうな金額にはならない。サイデさんの通勤距離は片道約18kmで、料金は2万5000トマン(約650円)だ。

 現地では、“Snapp”スナップと呼ばれる便利なアプリがあり、多くの人が頻繁に利用している。現在地と行きたい場所を入力すると、ドライバーの顔写真と名前、携帯番号、料金が表示され、すぐに連絡を取ることができ、支払いもクレジットカード登録しておけばそのままできる(ちなみにイランではVisaやMasterカードなどは使用不可)。日本のようにメーター計算ではないので、渋滞に巻き込まれても、行き先が若干変わったとしても料金は変わらず、融通も利く。