自分がもし死んだら、家族がもし亡くなったら、そのパソコンやスマホのデータ、ネット銀行やSNSのようなオンラインサービスのデータなど、残されたデジタルデータはどうなってしまうのか? どんな備えをしておくべきなのか? そんな「デジタル終活」について、デジタル遺品研究会ルクシー代表理事の古田雄介氏が解説していく。

 いまドイツで注目されている裁判がある。Facebookのダイレクトメッセージ開示裁判だ。

 2012年、ベルリンの地下鉄駅で15歳の少女がれき死し、その車両の運転士は故意の飛び込みを疑って少女の母親に慰謝料を請求した。自殺か否か。母親は真相を解明するために、少女が死の直前まで使っていたFacebookにログインしてダイレクトメッセージを調べようと考えた。ところが、少女のFacebookアカウントはすでに「追悼アカウント」という故人用の保護アカウントに切り替わっており、ダイレクトメッセージにはアクセスできなくなっている。Facebookのサポートに相談しても開示できないの一点張りだった。

 そこで母親が法定相続人としてFacebookに対して起こしたのがこの裁判だ。2015年12月、ベルリン地方裁判所は母親の訴えを全面的に認めたが、日本の高等裁判所に該当するベルリン控訴裁判所が2016年5月に出した判決は、相続人であっても本人以外は閲覧できないというFacebook側の主張を逆転で支持するものだった。そして裁判は最高裁である連邦司法裁判所に委ねられ、2018年6月21日から審理が始まっている。

Facebookの追悼アカウント。ページ上段に追悼アカウントの解説が表示され、氏名の上にも「追悼」と表記される
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 これは前回の「LINEを開きたい」という遺族の相談と近い事例だ。Facebookも一身専属タイプのサービスなので、相続人であっても故人のアカウントは引き継げないし、中身も見られない仕組みになっている。

 遺族からすれば、“亡くなった家族が残した紙の手紙や日記帳を開くのはこれまでもよくあった。相応の事情があれば、デジタルであっても閲覧したくなるのが人情だし、認められるべきだろう”と考えるのは自然なことのように思える。しかし一方で、サービス提供側からすれば、一身専属の建前もあるし、やり取りしている相手側のプライバシーを保護しなければならない責任もある。

 誰かが管理している庭に残された故人の足跡の取り扱いはどうにも難しい。Facebookが提供している「追悼アカウント」という仕組みは、その折衷案という側面もあるのではないかと思う。今回は、この仕組みを掘り下げて解説してみたい。