FXの負の遺産化はレアケースだが、ゼロではない

 まず、FXの負債が遺族に襲いかかる可能性だが、あるかないかでいえば、ある。けれど非常にレアケースだ。

 該当する事例について、2016年末にFXを取り扱う国内の主要ネット証券会社12社へ問い合わせたことがあるが、回答してくれた8社のうち5社は「過去5年間はゼロ」との返答。3社は「5年間に数件程度」とのことで、多くは10万~数10万円、最大で120万円強だったという。見過ごせる額ではないものの、法外というほどの負債は発生していないようだった。その後も類似のケースを追っているが、目立った事例には出合っていない。

 可能性は低い。しかし、ゼロではない。だから、残された旦那さんの品々を徹底的に洗ってもらった。

 結果、パソコンのブラウザーには、過去1年間の履歴で証券会社へのアクセスがなく、検索ワードの履歴でも関連するものは見当たらなかった。メーラーの受信履歴にも怪しいものは皆無。メインバンクの預金通帳やクレジットカードの取引履歴もしかりだった。証券会社からの支払い請求書ももちろん届いていない。

 ロックを解除できなかったスマホだが、スマホだけで取引していた場合でも、登録メールやFX口座への資金の移動など、何かしらの痕跡が残るのが普通だ。ただし、元からへそくり目的だった場合は意図的に痕跡を隠している場合もある。

 ここまでやって疑念は相当小さくなったものの、どうしてもゼロにはできない。なので今後も万が一の請求に備えて無理のない範囲で注意しておくことで、一応の納得をしてもらうことになった。痕跡があれば該当する証券会社に問い合わせて解約手続きをとればいいが、“ないことを証明する”という悪魔の証明が続く状況をすっきり解決するのはどうにも難しい。

 FXに関しては、実際の負債よりも負債不安の事例のほうが圧倒的に多いのかもしれないが、このように持ち主が何気なく放った言葉が遺族を苦しめることもあるのだ。いろいろな事情があるからすべてのデジタル情報を透明にしておくのは難しいだろう。ならば、口座情報を紙で残しておくなど万が一を想定した配慮はしておいたほうがいい。