自分がもし死んだら、家族がもし亡くなったら、そのパソコンやスマホのデータ、ネット銀行やSNSのようなオンラインサービスのデータなど、残されたデジタルデータはどうなってしまうのか? どんな備えをしておくべきなのか? そんな「デジタル終活」について、デジタル遺品研究会ルクシー代表理事の古田雄介氏が解説していく。

 中部地方に暮らす60代の女性からメールで相談を受け取ったのは2017年10月のこと。旦那さんが急死し、そのスマートフォンのロック解除に関してアドバイスが欲しいという内容だった。

 旦那さんは3年近く前からそのスマホを愛用しており、夫婦で旅行に行ったり娘夫婦が帰省したりした際はカメラアプリを起動するのが常だった。カメラマン役はいつも旦那さん。デジカメは折りたたみ式携帯電話の頃からすでに使わなくなっており、スマホが家族のメーンカメラとなっていた。

 つまり、スマホの中にはここ3年間の家族の思い出写真がほぼすべて入っている。しかしスマホにパスコードがかけられているとは、予想だにしなかった。会社員時代からの習慣なのか、スマホを使いこなす過程でふと設定する気になったのか、今となっては確かめようもない。

 とにかく解除しないことには始まらない。どうやら4桁の数字を打ち込めばいいらしい。旦那さんの誕生日、生年、自分の誕生日、生年、娘の…、孫の…。

 途中で「●分後にやり直してください」と表示されて何度か待たされたが、諦めずに候補を打ち込んでいると、最後は急に画面が暗転して端末の初期化が始まってしまった。ずいぶん待って操作できる状態になってみると、画面には「ようこそ」の文字。どうも工場出荷時の状態に戻ってしまったらしい――。

 前回の事例はパスワード入力を数回でとどめていたためロック解除の手段は残っていたが、残念ながら上記のケースは絶望的だ。初期化してしまったらストレージの中身は空になっている。しかも、最近のスマホはデータが暗号化されているので、仮に何かしらの残骸のようなデータを吸い出せたとしても、そこから有意なデータに戻すのは不可能に近い。

 なお、初期化するように設定されていない場合でも、ユーザーアカウントを使った再認証などを経ないとアクセス不能になることが多いので、復旧の難易度はやはり相当高い。繰り返しになるが、スマホのロック解除は「当てずっぽうに試すのは3回まで」を徹底したほうがいい。

 ただし。この場合でも一縷(いちる)の望みは残されている。バックアップデータのサルベージだ。

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※紹介する事例はプライバシーを保護するために、本筋を損ねない範囲で脚色を加えています。