40代、50代のビジネスパーソンにとって、かつて夢中になった80年代を中心とする歌謡曲は、癒やしを与えてくれる心の拠り所。そっと口ずさむだけで勇気が湧き、大事なものに気付かせてくれる深遠なメッセージが隠されている。この連載では、BS12 トゥエルビで放送中の『ザ・カセットテープ・ミュージック』で80年代歌謡曲の優れた論評をくり広げるマキタスポーツ氏とスージー鈴木氏に、厳しい世の中をしたたかに生き抜くための「歌う処方箋」について語ってもらう。

二つの若い才能に追われた阿久悠渾身の一曲

――この連載は、40代、50代の読者が青春時代に聴いた80年代を中心とする歌謡曲から、我々オヤジ世代がこれからの人生をしたたかに生き抜くためのヒントやエール、いわば“処方箋”を読み解いていこうという企画です。お二人の番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』では、歌手やグループに着目して構成されていますが、こちらはオヤジ世代の「悩み」を毎回のテーマに据えています。そして、第1回のテーマは「役職定年」です。

マキタスポーツ(以下、マキタ):定年かぁ……。僕は悲しきフリーランスなので、いつも、ずうっと肩たたかれているようなもんだからなぁ。

――そのように、よく「肩たたき」で表現される「定年」とは、また違った意味合いのものなのですが……。

スージー鈴木(以下、スージー):企業に勤める会社員って「定年」で退職する何年か前に、もうひとつ「役職定年」というのがあるんですよ。

マキタ:なんか切ないね。

スージー:定年を迎える前に、部長とか課長といった役職から外されてしまう。もうすぐ会社を辞めるんだから、若い人たちのために管理職とかやめてくれってやつですね。

マキタ:きっついな。

マキタスポーツ:1970年山梨県生まれ。ミュージシャン、芸人、俳優。2013年、映画「苦役列車」の好演をきっかけに、役者として活躍の場を広げる。文筆家としても鋭い時評・分析を展開。著書『すべてのJ-POPはパクリである 現代ポップス論考』など

スージー:私は、そういう方々に贈る曲を事前に考えてまいりました。一周回って、河島英五の『時代おくれ』(作詞:阿久悠、作曲:森田公一)。

マキタ:心に染みますねぇ。

スージー:この連載では、真面目にいい曲を取り上げようと思って(笑)。86年の歌なんですけど、70年に徹底的なモダニズムをやった阿久悠という作詞家が、若くて才能豊かな作詞家の松本隆に追いやられ、秋元康に追いやられ、ついに第一線から押し出されるわけですよ。追い詰められて、土俵際っていうときに、自ら『時代おくれ』ってタイトルを付けて、そうなった時のあるべき心情を綴った曲を作った。

マキタ:すごい人ですね。

スージー:はい。

〽 目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは 無理をせず
人の心を見つめつづける
時代おくれの男になりたい

マキタ:(朗々と)目立たぁ~ぬよぉ~にぃ~!

――おぉっ!

マキタ&スージー:(朗々と)はしゃがぁ~ぬよぉ~にぃ~!

マキタ:いい曲ですねぇ。