睡眠は人間に限らず生物にとって必要不可欠。書店やインターネット上でも、睡眠に関するさまざまな情報が氾濫している。昔から「寝る子は育つ」といわれるが、むしろ日々の激務に励む40~50代こそ、正しい睡眠の知識を身に付け、心身ともに頑強であり続けたい。そこで睡眠研究の第一人者である国立精神・神経医療研究センターの三島和夫先生に、睡眠にまつわるさまざまな“真常識”を伺った。

「目覚めスッキリ=いい睡眠」ではない

 働き盛りのビジネスパーソンの中には、眠りに関してお悩みの向きも多いだろう。いわく「最近どうも寝つきが悪い……」、いわく「若いころに比べて眠りが浅いような気がする……」、はたまた「夜中にちょくちょく目が覚める……」などなど。これらのことから、「自分は睡眠障害ぎみか?」と心配する人も少なくない。

“目覚めスッキリ”で朝を迎えたいものだが……(写真:bee32/123RF)

 いきなり身も蓋もない結論になるが、治療が必要な不眠症でない限り、睡眠時間が短くなったり、夜間に目が覚めたりするようになるのは、40~50歳世代にとっては生物学的に“当たり前”のこと。三島先生はこう話す。

 「年齢を重ねれば筋力や視力が衰え、白髪が生えてくるのと同様に“睡眠力”も衰えてきます。この衰えは、実は筋力の衰えよりも激しい。筋力は筋トレなどでかろうじて向上や維持ができるかもしれませんが、眠る力はそうはいきません。中高年になってエネルギー消費量や基礎代謝が落ちてくると、深い睡眠の必要性も低下してきますので、これはもう自然の摂理と捉えるべきですね」(三島先生)

 睡眠力の減退は必然と心得よ、というわけである。とはいうものの、一日の激務が待っている身としては、いい睡眠をとって、目覚めスッキリといきたいもの。だが、この“いい目覚め”もクセモノらしい。

 「いい目覚めが、いい眠りに直結すると思いがちですが、実はそうではありません。もちろん眠りが充足していて目覚めがいいと感じるときはありますが、たとえ眠りが浅かったり睡眠不足気味でも、レム睡眠の後の少し浅い睡眠で目が覚めるなどタイミングが良ければ、目覚めがいいと感じることもあるんです」(三島先生)

 単に目覚めを良くしたいだけなら、レム睡眠が終わった直後の浅い睡眠の段階を狙って起きるのも、一つの手だ。しかし、その結果「よく寝た」と感じたとしても、それが「いい眠りだった」には結びつかないということ。眠りの良しあしの判断基準は、別のところにあるのだった。

三島和夫(みしま・かずお)。1963年秋田県生まれ、医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大医学部精神科学講座講師、同助教授、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授を経て、2006年6月より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。睡眠に関する著書多数
[画像のクリックで拡大表示]