最高の音質で、好きな音楽をいつでもどこでも楽しみたい。そんな願いをかなえてくれるヘッドホンが、今、急激な進化を遂げつつある。技術の進歩が実現したポイントは3つ。ハイレゾによる音質の飛躍的な向上、ノイズキャンセルでの雑音の徹底した低減、そして、ワイヤレス化がもたらす快適性のアップだ。「ウォークマン」の開発によって「いつでもどこでも音楽を楽しめる時代」の幕を開けたソニーを訪ねて、その最先端技術の現状に迫る。第1回は、最近話題の「ハイレゾ」がもたらす可能性について聞いた。

今回のシリーズではヘッドホンの進化の実態に迫る!
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 「高精細」や「高解像度」を意味する「ハイレゾリューション(High Resolution)」、略して「ハイレゾ」という言葉は、音楽好きを自認する身として以前から知っていたが、「所詮はクラシック音楽好きのマニアにしか手の届かないぜいたくな趣味の世界」と思っていた。ところがここ数年、事情が大きく変わってきた。クラシックやジャズのみならず、ロックやJ-POPの著名なアーティストたちが、こぞって「ハイレゾ」音源の作品をリリースし始めたのだ。しかも自宅でオーディオの前に鎮座して拝聴するだけでなく、ポータブルオーディオプレーヤーやスマートフォンで、いつでもどこでもハイレゾで音楽が楽しめる時代が到来しつつある。

 その鍵となるのが、ハイレゾ対応のヘッドホン・イヤホンの登場だ。現代のヘッドホンはどんな進化を遂げているのか、40年前の1979年に「ポータブルオーディオプレーヤー」の元祖「ウォークマン」を世に送り出し、以後、その世界を牽引し続けてきたソニーを訪れ、ヘッドホンの開発者に話を聞いた。

そもそも「ハイレゾ」って何?

 ハイレゾの技術の進歩を理解するために、まずは「ハイレゾとは何か」について、簡単におさらいしておこう。

 一般のリスナーにとっての音楽のデジタル化は、1982年にソニーとフィリップスが共同で開発した「CD(Compact Disc)」の登場から始まる。CDは、16bit/44.1kHzという規格で音楽データが収録されている。

 ビット(bit)の単位で表す「量子化ビット数」は、ダイナミックレンジ(音の最小値と最大値の幅)を規定する。CDの「16bit」なら、最小振幅(無音)をゼロとすると、最大振幅は6万5535(2の16乗マイナス1)で、ダイナミックレンジは96dB(デシベル)となる。

 キロヘルツ(kHz)の単位で表されるのは「サンプリング周波数」だ。CDの「44.1kHz」は、1秒間の音声信号を4万4100に分割して、デジタル化していることを意味する。つまり、量子化ビット数とサンプリング周波数が増えれば増えるほど、オリジナルの音源データを忠実に再現できるというわけだ。

 「ハイレゾ」については、JEITA(電子情報技術産業協会)と日本オーディオ協会によってそれぞれ定義されているが、一般的には「サンプリング周波数96kHz以上、量子化ビット数24ビット以上」のものが「ハイレゾ音源」と呼ばれる。

 24ビットの最大振幅は約1677万(2の24乗マイナス1)で、ダイナミックレンジはCDより大幅に広がり、サンプリング周波数96kHzは1秒間を9万6000とCDの倍以上に微細に分割するため、ハイレゾ音源はCDをはるかにしのぐ情報量で、オリジナル音源をより忠実に再現できるわけだ。