ナノテク、人口知能(AI)、クラウドコンピューティング、IoTなど、新たなテクノロジーの登場により、私たちが日常で利用する商品やサービスは日々進化を遂げている。これらの「暮らしの技術」はどのようにして実現されたのか。将来、私たちの生活をどんなふうに進化させていくのか。このコラムでは、注目の製品・サービスに焦点を当て、最新事情と近未来を科学的な視点から検証する。

(写真:llhedgehogll/PIXTA)
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 体重が増えたからといって一喜一憂するなかれ。自分の体の「筋肉と脂肪の比率」と「脂肪の付いている場所」こそが、健康に過ごせるか、恐ろしい病魔に見舞われるリスクを高めるかの重要な指標だった。その指標を“見える化”してくれる心強いアイテム「体脂肪計・体組成計」は、いったいどこまで進化しているのか。これから3回にわたって、その最新動向を探る。

ダイエットが必要な「肥満」の定義

 体重計に乗って「太った?」「痩せた!」と騒いでいたのは、過去の話。今では体重計の多くに「体脂肪率」を測れる機能が付いている。「体重計」より「体脂肪計」という呼び名を耳にすることも増えてきた。

 その一方で、一見、ぽちゃっとした、いわゆる「肥満」でも、元気に過ごしている人はいる。では、真剣にダイエットに取り組まねばならない「肥満」とはどんな太り方なのか、どうすれば「危険な肥満」なのかどうかを判別できるのか、一度、きちんと知りたい。

 ということで、まずは医学・薬学研究者や医師、看護師や管理栄養士、健康運動指導士など2800人超で構成される「日本肥満学会」に話を伺うことにした。

 「肥満というのは“脂肪組織が体に過剰な状態”を指します。海外でも、肥満自体が疾患なのか、単なる健康のリスク要因なのか、長い間議論されてきました」

 そう語るのは、日本肥満学会で常務理事を務める神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 糖尿病・内分泌・総合内科学分野 糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授。

神戸大学大学院医学研究科 内科学講座 糖尿病・内分泌・総合内科学分野 糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授
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 「太っているからといって、全員が病気ということではありません。太っていても、健康障害を発症しない人もいる。全く健康障害のない方は、医療として治療すべき対象ではありません。日本肥満学会は主に医療者の団体ですので、単にリスク要因としての肥満と、疾患として治療すべき肥満を分けようと考えて、2000年に医療の対象にすべきものとして『肥満症』という考え方を報告しました」(小川教授)

 この考え方のもと、1977年の文部省(現・文部科学省)の総合研究班会議を拡大するかたちで1980年に発足した日本肥満学会(当時・肥満研究会)は、2000年に「新しい肥満の判定と肥満症の診断基準」を公表。2006年に「肥満症治療ガイドライン 2006」、2011年に「肥満症診断基準 2011」、2016年には「肥満症診療ガイドライン 2016」、2017年に「小児肥満症診療ガイドライン 2017」を発表した。

 健康診断でもご存じのように、肥満度は一般的に「BMI(体格指数)」で判定される。BMIでは、体重(単位はkg)を身長(単位はm)の2乗で割って、その数値が25以上なら「肥満」、さらに35以上であれば「高度肥満」と判定される。

 このBMIで規定される「肥満」と「高度肥満」のなかで、「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併し医学的に減量を必要とする肥満」を疾患としての「肥満症」と定義して選び出し、医学的に適切な治療や管理を行おうというのが日本肥満学会の「診療ガイドライン」のポイントとなっている。つまり「肥満」ではなく「肥満症」であれば、ダイエットや治療が必要になるというわけだ。

 では、どんな条件の「肥満」が「肥満症」なのか。同会のガイドラインによれば、BMIが25以上の肥満のうちで、“2つの条件”のいずれかを満たすものが「肥満症」だという。