「わざ」のあったクルマ

ホンダから提供されたホンダZの透視図。「NewZ」と書かれているとおり、水冷化後の姿。長いリアのリーフ・スプリングに注目
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 こうしたスタイリングをはじめとした企画の良さがホンダZの「わざ」というべきものであった気がする。翌年には、既発売のラインアップ全体を「ダイナミック・シリーズ」と位置づけ、それとは別に「ゴールデン・シリーズ」の名の下に、「ホリデイ」「カスタム」「GTL」「AT」という4モデルを追加する。性能よりも装備や乗りやすさに重点を置き、なによりも話題を提供しつづける役を果たした。

 しかし、ホンダZはちょうどわが国の乗用車全体の転換期にあった。ホンダは静粛性、燃費などを考慮し、大ヒット作だったホンダNに水冷エンジンを備えたライフに切り替える。「モーレツからビューティフルへ」というような世の中の移り変わりにも合致した。

 ベース車を失ったホンダZも1971年12月にライフ・ベースとなりエンジンを水冷化。さらに1972年11月には、巻き上げ式のリアクォータ・ウィンドウとサッシレスのドアを導入してハードトップに。しかし、モデル・ラインナップも縮小され、かつての話題性は失われていた。

 結局、1974年まで生産されてホンダZは姿を消すのだが、いまだ少数の熱心な愛好家がいるという。それだけインパクトを与え、印象に残るモデル。つまりは「わざ」のあったクルマ、と思うのである。

著者/いのうえ・こーいち
理工系大学院修了。日本写真家協会(JPS)、日本写真作家協会(JPA)会員。 主な連載誌は小学館「ラピタ」、日本カメラ社「日本カメラ」、エイ出版 「東京生活」、サドルシューズ「ミニフリーク」など。クルマをはじめとして,乗り物全般を愛好する。著書には「客車好き」(JTBパブリッシング)、「ぼくの好きな時代、ぼくの好きな車たち」(エイ出版)、「クルマ好きはやっぱりフェラーリが好き」(二玄社)、「アルファ156」(経林書房)、「世界の自動車100点」(講談社)、「世界の名車」30巻(保育社)、「男の鉄道ホビイ」(エイ出版社)などがある。