無駄なラインのないスタイリングがCR-Xの持ち味だった

初代のCR-Xはさらにコンパクトで先鋭的であった。オトナっぽく、高性能になった第二世代と、好みは分かれるところだ
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 いたずらに宣伝⽂句で謳うようなスペックではなく、こうした実質的な部分に重きを置いた充実が、ホンダCR-Xをしてオトナのスポーツギア、というようなイメージを植え付けることになっていたのかもしれない。それに何より、一番アピールできるスタイリングでCR-Xは大いに個性的であったのだから。公式には表明されずあくまでも噂の域ではあったのだが、初代CR-Xの外連味のないボディ・スタイリングにはイタリアのカロッツェリアの息が掛かっている、といわれた。真偽のほどはさておき、そういわれても納得できてしまうような無駄なラインのないスタイリングだ。後席を最小限にすることで、ほとんどふたりのためのスポーツ・クーペといっていいアウトラインを持たせている。なにもかも欲張ってしまい、しかも、アイデンティティはエンブレムにありというようなデコラティブで没個性のデザインが多い中にあって、実に爽やかに映った。この思い切りのよさが、そのままCR-Xの持ち味となって、印象深くしている。

 クルマは商品だから、いま売れなくてはいけない。確かにそうではあるけれど、それだけでもないのではないか。ホンダというブランドにある種の期待を持ちつづけているクルマ好きは、ひとつの好例としてこのCR-Xを思い起こしたりするのである。

著者/いのうえ・こーいち
理工系大学院修了。日本写真家協会(JPS)、日本写真作家協会(JPA)会員。 主な連載誌は小学館「ラピタ」、日本カメラ社「日本カメラ」、エイ出版 「東京生活」、サドルシューズ「ミニフリーク」など。クルマをはじめとして,乗り物全般を愛好する。著書には「客車好き」(JTBパブリッシング)、「ぼくの好きな時代、ぼくの好きな車たち」(エイ出版)、「クルマ好きはやっぱりフェラーリが好き」(二玄社)、「アルファ156」(経林書房)、「世界の自動車100点」(講談社)、「世界の名車」30巻(保育社)、「男の鉄道ホビイ」(エイ出版社)などがある。