日経BPnet セカンドステージに「くるまのわざ」として連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2008年7月10日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。

第三のロータリー・エンジン搭載車

美しいスタイリングが魅力のマツダRX-87。上級のグランツーリズモを目指し、前輪駆動や独立懸架など、マツダの意欲を詰め込んだモデルだった
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 もはやこのクルマの存在を憶えておられる方も少ないのではあるまいか。3年間で1000台にも満たない生産台数、その後を引き継ぐモデルが登場しなかったこということからすれば、商業的には決して成功したとはいいがたいのだが、しかしこのまま忘れ去ってしまうには惜しいほどの意欲が込められていた1台。その名はマツダRX-87。コスモ・スポーツ、ファミリア・ロータリー・クーペにつづく、マツダにとって第三のロータリー・エンジン搭載車として送り出されたものである。

 コスモ・スポーツは、ロータリー・エンジンの存在を世界に知らしめるべく、イメージリーダーの役をも持たせたシンボリックなスポーツカー。ロータリー・クーペはロータリー・エンジンを広く一般にも浸透させる目的を持って送り出された。それらに対してRX-87は、上質な高級高性能パーソナルカーを目指してつくられた。

 ようやく海外進出もはじまった1960年代の末。一気に世界に飛び出したいという意欲が感じられるようなモデルであった。「ルーチェ・ロータリー・クーペ」という愛称からも想像されるように、ロータリー・エンジン搭載のマツダ・ルーチェ(1966年に発売された小型4ドア・サルーン)のクーペ版、くらいにしか理解されなかったのは、RX-87にとって大きな不幸であった。