日経BPnet セカンドステージに「くるまのわざ」として連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2008年4月24日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。

ひとりの自動車好きが自分のためにつくったスポーツカー

アルピーヌ・ルノーA110の魅力的なフロント・ビュー。“スタイリングがまとまった美しいクルマは大きく見える”の言葉通り、見た目よりは遥かにコンパクトだ
[画像のクリックで拡大表示]

 今ではその名前を思い出すことも稀かも知れないが、未だに熱心な愛好家が少なからず存在するクルマのひとつに、アルピーヌ・ルノーA110がある。アルピーヌ社がルノーのパーツを使ってつくりだしたクルマ、という意味がそのネーミングに込められている。

 そもそものはじまりは、ひとりの自動車好きが自分のためにつくった1台のスポーツカーにはじまる。第二次世界大戦後、ようやく世の中が落ちついた頃、若くして父親からルノーのディーラーを引き継いだジャン・レデレという人物が、自分の楽しみのためにつくったスポーツカーでアマチュア・レースに参戦する。レースへの参加はふたつの幸運を彼にもたらした。ひとつは、彼のレースでの活躍振りを見て、是非とも同じものをつくってくれないか、という依頼が舞い込んできたこと。もうひとつは、その国際レースに出たことで、イタリアの自動車界との結びつきが得られたことだ。1950年代のはじめ、いうなればクルマによって旧き佳き時代がはじまろうか、という頃である。