日経BPnet セカンドステージに「くるまのわざ」として連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2008年3月13日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。

佳き英国時代のクルマ「バンデン・プラス」

ホイールベース2375mm、全長3730mmx全幅1535mmというサイズにしては堂々たるスタイリング、風格さえ漂うバンデン・プラス・プリンセス1300
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 「バンデン・プラス」というブランド名は聞き慣れないかも知れないが、「ミニ・ロールス」というこのクルマに付けられた愛称はご存知かも知れない。いかにも英国的な、それも佳き時代の英国だから存在し得た、興味あるクルマのひとつを紹介しよう。

 英国にとって自動車産業がそろそろ凋落期にあった1960年代には、最後の輝きというような数多くのモデルがラインアップされていた。例えば、お馴染みのミニもそうだが、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)という、当時の民族資本の大半がひとつ傘のしたに収まった企業体の中では、それまでの伝統的なブランドの名前や特徴を残した共有モデルが少なくなかった。

 ミニでいえば、ニ大量産車ブランドであるオースティンとモーリスのふたつが最初から作り分けられ、オースティン・ミニ、モーリス・ミニとして販売されていた。バッジだけが異なることから「バッジ・エンジニアリング」ということばが使われたりした。

 ミニのひとクラス上の小型車として「ADO16」が登場したのは、ミニより3年遅れた1962年のことである。ミニがコードネームでは「ADO15」だったから、それよりひとつ上というのが解ろう。ADO16の場合、コード名がそのまま総称として使われたのは、ミニというような共通名がなく、モーリス1100の名で登場したからだった。

 しかもこのADO16、最初のモーリス1100につづいてMG1100、オースティン1100、バンデン・プラス1100、ライレイ・ケストレル、ウーズレイ1100と1965年までに全6ブランドが揃うのだから、ひとつの名前で呼ぶのは難しいことであった。