日経BPnet セカンドステージに「くるまのわざ」として連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2008年1月31日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。

本格的なレーシング・モデルの開発で誕生した「ポルシェ904カレラGTS」

ポルシェ904カレラGTSはポルシェらしからぬ、流麗なスタイリングが 魅力。1964年に100台余がつくられ、レースでも活躍した
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 ポルシェというと緻密な設計と生産技術とで、速いスポーツ・タイプのクルマを専門的につくりつづけるブランド、というイメージがある。とくに熱心な人でなくとも、ポルシェ独特のスタイルは、すぐに脳裏に思い浮かんできたりする。いうまでもなく、ポルシェ911に代表される高性能車メーカーであり、同時に技術開発研究所という側面を持つドイツの代表的ブランドのひとつだ。

 いまでこそ、SUVのカイエンやボクスターなどラインアップを充実させているが、設立されてから30年ほどは、ポルシェ356、911という、ほとんどふたつのモデルだけをつくりつづけてきた。そのポルシェの歴史のなかで、異端と決めつけるにはもったいないようなモデルがある。表題のポルシェ904カレラGTSは、わが国では、第2回日本グランプリでスカイラインとデッドヒートを演じた(といっても、国産のひいき目でレース中、唯の1度だけスカイラインGTが先頭に立ったというだけだったのだが)ことでその名を知られていたりする。

 ポルシェ904カレラGTSは1964年に、レースを主目的として100台ほどが生産された。それまでは、ポルシェ社はもっぱらポルシェ356をつくり、特別モデルのようにして速いレース向けのモデルを加えていた。

 しかし、その戦闘力は高く、いくつものレースでポルシェの名を轟かせていた。「サーキットは最も有効な宣伝活動の場」ということを早くから実証して見せたのはポルシェ、といってもいいかも知れない。

 ポルシェ356ボディを使ったカレラのシリーズ、またアルミ・ボディの軽量スパイダーのシリーズなどがレース向けのモデルとしてつくられたのだが、次第に全体的な性能が高まっていくにつれ、より本格的なレーシング・モデルの開発が要求されるようになった。そうして誕生したのがポルシェ904カレラGTSであった。