ポルシェならではの「独特の感覚」

1973年のポルシェ911S。ルーフ部分だけが脱着可能な「タルガ・トップ」と呼ばれるスタイルもポルシェが提唱
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 しかし、こうしてスペックを並べてみたところで、ポルシェのポルシェたる所以、ポルシェを愛好して話すことのできない人たちが感じているシンパシーを理解することはできまい。

 キーワードは、「精度が違う」ことと「独特の感覚」。つまり、同じスペックであっても、生産におけるクオリティ(もちろんそれには、解っているけれどコストの関係で敢えて要求しない、というのもあるだろう)の違いが、実際に走らせてみると感じられる。乗り手の意志に忠実に走れるという感覚は、そうした精度の高さがあってこそ、というものだ。

 先ほど書いたシフト感覚など、好き嫌いはあるが、これぞポルシェ、と思えればプラスに働く。左手で操作するキーをはじめとして、ポルシェらしさに包まれて独特のサウンドとともに走ることは、普通とは違う歓びを感じさせてくれる。足周りにしてもタイヤにしても、現代のクルマから見れば性能は劣る。

 それをカバーし、操って走るところにクルマを走らせるということに根元的な魅力がある。それこそが、冒頭に述べたクルマの目指すべき方向の大きなひとつ、と確信するのだが。

著者/いのうえ・こーいち
理工系大学院修了。日本写真家協会(JPS)、日本写真作家協会(JPA)会員。 主な連載誌は小学館「ラピタ」、日本カメラ社「日本カメラ」、エイ出版 「東京生活」、サドルシューズ「ミニフリーク」など。クルマをはじめとして,乗り物全般を愛好する。著書には「客車好き」(JTBパブリッシング)、「ぼくの好きな時代、ぼくの好きな車たち」(エイ出版)、「クルマ好きはやっぱりフェラーリが好き」(二玄社)、「アルファ156」(経林書房)、「世界の自動車100点」(講談社)、「世界の名車」30巻(保育社)、「男の鉄道ホビイ」(エイ出版社)などがある。