日経BPnet セカンドステージに「くるまのわざ」として連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2007年6月21日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。

ライバルもなく新たな規範でものづくり

シトロエンが戦後間もなく送り出したベーシックカー。シンプルそのものだったが、乗り心地はよく、ロングセラーを続けた
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 このシリーズでトヨタのつくった軽スポーツカー、トヨタ・スポーツ800について述べた。それは、空冷2気筒エンジンを搭載した、トヨタの大衆車、パブリカのコンポーネンツを利用してつくられたスポーツカーであった。そのトヨタの大衆車パブリカがもっとも影響を受けたクルマ、それが今回のシトロエン2CVである。

 シトロエンというブランドはいくつかの顔を持った唯一無ニの存在だが、いずれにせよ独自の規範に則って、とことん追求している姿勢がいくつかのモデルに共通していえる。安価で実用性に優れた、必要最小限の自動車。それをわき目もふらずに追求していったらこんなクルマ、いや、こんな乗り物になった。シトロエン2CVはその徹底ぶりで、シトロエンを代表するひとつになった、といっていい。

 シトロエン2CVが登場したのは1948年。そもそもは戦前に計画されたものが、戦争でご破算になりもう一度リトライされたもの。戦後、たとえばドイツのVWビートル、イタリアのフィアット600、英国のモーリス・マイナーやミニ、さらにフランスではルノー4CVなどがベーシックカーとして大衆に自動車を広める役を果たすのだが、シトロエン2CVはそれらよりいち早く登場している。

 そういう意味では、ライバルもなくまったく新たな規範でものづくりができるという、シトロエンにとって得意科目というべき甲斐のある仕事となった。