日経BPnet セカンドステージに「くるまのわざ」として連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2007年2月8日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。

病に倒れた若き息子のサインをエンブレムに

抑揚のあるスタイリングはいかにもイタリアンメイドのものという印象。半ばカロッツェリアが手づくりした魅力的なシェイプ
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 ディーノというのは、フェラーリの創始者であり、レース界、自動車界でいまだに語り継がれるカリスマ的存在であるエンツオ・フェラーリ(1898-1988)の息子の名前である。遅くして産まれた子、父の後姿を見てエンジニアとして成長しつつあった若き日に病に倒れて逝ってしまった愛息。硬⾻の父は、つくり出した「小型フェラーリ」にディーノの名前を付け、彼のサインをエンブレムにした。

 小型フェラーリ--- それまで、乗用車としては最大級のV12気筒エンジンを搭載し、最高峰であることを売り物に高級高性能車だけをつくってきたフェラーリが、初めてつくり出した小型車。V12を搭載しない初めてのフェラーリであった。

 「V12に非ずば、フェラーリに非ず」、そんな雑言を訊くまでもなく、自らフェラーリのエンブレムを一切排除し、息子の名を付けて送り出した。まず以って、その意志に注目させられてしまう。