日経BPnet セカンドステージに「くるまのわざ」として連載していたものを再編集して掲載しました。初出は2006年6月15日です。記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。
姿かたちはお馴染みの「てんとう虫」、スバル360。軽量な丸い甲殻類スタイルで、昭和33年からちょうど15年間つくられてR-2にバトンを渡した
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 いまやクルマは生活になくてはならない交通機関であり、同時に基幹産業ともなっている。クルマが誕生してから120年、ここまで生活に深く浸透してくることを、120年前の発明者たちは見通していたのだろうか。いまや成熟しきって、エネルギイ問題や環境問題、安全の問題など、ポジティヴな進化だけでは語れない課題も出てきている。

 小生、クルマをはじめとするのりものはどちらかというと趣味のアイテムとしてずっと愛好してきた。もちろん、男が入れ込む趣味対象なのだから、そこには技術的な拠り所が込められているものが多い。いささか手前勝手な解釈のもと、そのテーマに対して毎回ひとつのクルマを紹介していくことにしよう。すなわち、「技術的見地から見て、語るものを持ったクルマ列伝」。

 そうして思い起こしてみるといくつもの懐かしいクルマの名前が挙がる。佳き時代の名車の名前が多くを占めるのは、その時代が技術的に大きな飛躍を見せた時期、つまり、クルマにとって発展期にあったということにほかならない。ひとつひとつを見ていくことで、「わが国の自動車技術史」を振り返ることになれば。そんな思いで綴っていきたい。

 さて、今回採り上げるのは、スバル360だ。クルマにとって佳き時代から半世紀ほども過ぎた現代の国産メーカーの中で、技術的に一番語るべきものを持っているのは、誤解を恐れずにいうならば、ひとつ「スバル」ではないか、と思う。独自の水平対向エンジンを守っていることひとつとっても、いかにスバルというメーカーが拘わる部分を持っているかが窺い知れる。