プロライセンスと年齢制限

――他の競技では五輪出場に対して年齢制限を設けている場合がありますが、JeSUとしてはどうお考えでしょう。

岡村氏: われわれは義務教育課程を修了しないとプロライセンスを発行しないことにしています。たとえば将棋の世界では藤井聡太六段が中学生のときから高額な賞金を得ていますが、将棋には長い歴史があり、賞金を得ることに対して社会的に認知されています。一方、eスポーツは新しい産業なので、同じようにはいきません。健全な青少年の育成をうたっている以上、やはり義務教育を終了するまではプロライセンスを発行するべきではないと考えています。
 ただ、年齢がそれに満たなくても高いパフォーマンスを持つプレーヤーに対してはジュニアライセンスを発行して、その実力を認めています。15歳以下でも活躍できるフィギュアスケートのような実例もありますし、社会的な認知が進めばレギュレーションの変更もあり得ますが、まずはここからスタートしようということですね。

――教育的見地からの年齢制限というわけですね。

岡村氏: 先に年齢別のレーティングに関するCEROの話をしましたが(※【CESA編】参照)、これも大きく関係しています。海外では日本で言うZ区分、つまり18歳以上のみを対象としたゲームで15歳の選手が優勝して問題になったケースがあります。JeSUが公認する大会ではそうした問題が起こらないよう、興行主にはレギュレーションへの準拠が求められます。そういう意味でもルールの整備と可視化は大事ですし、さらに社会的認知を高めるために、海外の国際大会に代表団を送り出すなどして、実績を重ねていきたいところです。
 JeSU設立の柱であるeスポーツ団体の統合はJOC加盟のためでしたし、プロライセンスはこうした国際大会へ派遣する強化育成選手のリストとしても機能します。高額賞金を得るためだけの存在であるかのように、そこだけにフォーカスされるのはJeSUとしては本意ではありません。

諮問委員会などの設置も視野

――先ほどルールの可視化というお話が出ましたが、公開される予定はありますか。

岡村氏: 誰もが批判したり意見を寄せたりできるよう、JeSUのサイトで公開する準備を進めています。一部から「レギュレーションを隠している」といった批判を受けていますが、全くそんなことはありません。物理的に間に合わず、お見せできるものがなかっただけなのです。
 先ほどのジュニアに対するプロライセンスの制限にしてもそうですが、JeSUのレギュレーションはJeSUやCESA、JOGA、さらにはeスポーツ選手の代表なども加え、議論を重ねて制定しています。この委員会では大会運営はどうあるべきか、選手にはどんなサポートが必要か、またライセンスカードのデザインに至るまで、事細かに話し合っています。
 委員には任天堂やソニー、マイクロソフトといったハードウエアメーカーも含まれており、興行主やIPホルダー、選手関係者などさまざまな立場から意見を述べ合っています。批判されているような「密室」とはほど遠いものと言えるでしょう。現在はCESA会長が議長としてとりまとめを行っていますが、CESAやJOGAが勝手に何かを決められるような場ではありません。逆に多様な立場の委員で構成され、重層的な検討を続けているからこそ、時間が足りずに公開が遅れているのが実情です。

――今後、レギュレーションの修正などもあり得るのでしょうか。

岡村氏: 基本的な理念は不変ですが、スタートアップから安定した巡航速度に移り、成熟期に至るそれぞれの段階で柔軟に変更していく必要があると考えていて、先ほどの委員会で検討していくことになっています。

――委員会の開催頻度はどれくらいですか。

岡村氏: 現在は月2回のペースです。委員は28人いて、皆さん多忙な人たちばかりですが、それでも毎回、約9割の人たちが出席し、様々な意見を出し合い、さらにその内容を持ち帰ってまた練り直すといったことを繰り返しています。過去には消費者庁が景品表示法の勉強会を開いてくれたこともあり、JeSUの立ち位置がより明確になりました。
 ゲーマーの方々との意見交換会も開いており、JeSUに足らないものが何かを探る努力を続けています。今後は学識経験者や隣接産業の方を含めた評議委員会や諮問委員会をJeSUの内部に設置し、レギュレーションや方向性に偏りがなく、独善的にならないような仕組みを作っていきたいですね。青少年の健全な育成をうたい、スポーツ団体と名乗る以上、健全性は大切だと考えています。