最初の大任はCESAとJASGA合併後の舵取り

――2015年5月にCESAの会長に就任されましたが、就任当初に想定されていたような目標や指針などはありましたか。

岡村秀樹氏(以下、岡村氏): まず就任の前月にCESAとJASGAの合併がありました。会長に就任し、最初の大きな仕事は、このCESAとJASGAをいかにスムーズに融和させるかという点でした。
 CESAはゲームソフトを作るIP(キャラクターなどの知的財産権)ホルダーだけでなく、家庭用ゲーム機というハードウエアを作るメーカーも加盟している団体です。一方、JASGAには携帯電話からはじまり、スマートフォンへゲームを供給する企業が集まっています。両者が一つになればパーソナル向けのゲームをほぼ網羅できるため、前向きに統合を図ったわけです。

――CESAとJASGAの合併は、ゲーム業界としてはかなり画期的な出来事でした。

岡村氏: 合併自体はエポックメイキングでしたが、CESAには伝統的に取り組んできた活動がありますし、JASGAにもまた独自の理念や活動があります。ですから、相互の長所をいかに伸ばしつつ融和していくかが重要な課題でした。この点に関して自主規制や啓発といったJASGAの活動については、CESAに統合した以降もうまく取り組めているのではないかと思います。

――CESAが発足した20年前との比較ではもちろん、eスポーツの隆盛などを見ても、年々ゲームに対する社会的認知が高まっているのを感じます。

岡村氏: ただ、啓発という点に関して言うと、今年になってWHO(世界保健機構)がゲームを行うことにコントロールがつかない症状を疾病として定義するといった報道があり、大きな話題となりました。一方でゲームは高齢者の認知症の改善につながるというエビデンスが示されていますし、ハンディキャップがあってスポーツが楽しめない方々でもeスポーツなら楽しめるといったケースもあります。両面あるなかで、マイナス面ばかりが大きな話題になってしまうのは、我々の啓発がまだ足らないのかもしれません。

さらなる議論が必要なレーティング基準の国際化

――ほかにはどのような課題がありましたか。

岡村氏: 合併と並ぶ当時からの大きな課題が、年齢規制、レーティング制度です。ゲーム業界の自主規制を目的に、CESA内にある「レーティング部会」の調査研究や議論を経て第三者機関の設置を決定しました。それが2002年に設立したCERO(特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構)です。時代の変化もあって、近年はこうした年齢別レーティング制度に関する議論が世界的に活発化しており、13年に各国のレーティング組織が集まってIARC(国際年齢評価連合)という国際組織が作られました。世界的なレーティングに対する考えは尊重すべきですが、日本的な価値観に立つCEROとではつじつまが合わない部分もありますね。

――レーティングに関連するゲーム内の表現は、日本と海外とではどちらが厳しいのでしょうか。

岡村氏: 暴力表現に関しては日本のほうが、性的な表現については海外のほうがはるかに厳しいですね。たとえばミニスカート姿の少女だとか、小児性愛を連想させるような表現については日本の何十倍も海外は敏感です。逆に日本で問題になるような表現が海外では審査対象にすらなっていないケースもあって、こと一筋縄ではいきません。
 CEROでは性的および暴力的な表現について定期的に意識調査を行っていますが、それを見ると5年くらいのスパンで社会の一般的な意識に変化が見られます。つまりレーティングは絶対不変の基準ではないのです。
 IARCのレーティングは世界基準であることに意味があるのですから、日本流にアレンジするわけにはいきません。かといって単純に世界に合わせて基準を変えた場合、果たしてそれが日本の社会に受け入れられるのか、また我々CESA、あるいはCEROとして説明責任が果たせるのか、といった問題があります。

――現状ではレーティングの基準を世界に合わせるのではなく、海外と日本国内でゲーム内の表現を変えるということになるでしょうか。また国内だけ、あるいは海外だけでしか売らないといった方法でも対応されていますよね。

岡村氏: そうした現状の方法が妥当なのか、またIARCに参加すべきか否かも含め、CEROのなかでも意見が分かれています。IARCとはCEROを通じて主催団体と議論を行っている最中です。無理矢理決着を付けるようなものではありませんから、このテーマは次期会長へと引き継ぐことになりました。