押弦の強さと運指の滑らかさが伝わる音

 有線で聴いたとき、まず感じたのは「AKGの音だな」ということ。AKGのモニター用ヘッドホンを10年近く愛用しているが、それと同じ感触の音という印象だった。低音から高音までバランスよく鳴らしたうえで、低~中音域をほどよく引き締めてボワボワ感を抑え、全体的に音の艶のようなものを加えて、音楽を楽しく聴かせてくれる。こうしたAKGの音が好きなので、N5005もすぐに気に入った。

 使い始めのころはそうして普通に聴いていたのだが、使い込むうちに自宅のヘッドホンよりはるかに細かいニュアンスまでよく聴き取れることが分かってきて驚かされた。

 たとえばエレキベースの音だ。エレキベースは弦が新しいうちは金属弦らしいメタリック感のある音がするが、弦が古くなってくるとだんだんメタリック感が減ってボヤっとした音に変化していく。これまで使っていたイヤホンやヘッドホンでは、弦が新しいか古いかの区別はつくが、弦がどれだけ新しいかという鮮度までは感じられなかった。それがN5005だと、張りたての新鮮な弦の感触がよく伝わってきて、より生き生きと聴こえて楽しい。

 さらに楽しいのは、押弦やピッキングのニュアンスが伝わってくることだ。エレキベースは指で弦を押さえて弾くが、このとき余裕がないプレーヤーだと、正確に弾こうとするあせりから力んでしまい、弦を強く押さえすぎて音程が少し歪んだり、音のアタック(立ち上がり)が乱れたりする。余裕を持って余分な力を抜いて弾けるうまいプレーヤーだと、そうしたことがなくスムーズだ。

 N5005で聴いていると、“あ、このフレーズはかなり必死に弾いているな”とか、“難しいフレーズなのに余裕を持って弾いているな”といったことが伝わってくる。これまで気が付かなかった演奏の生々しさ、プレーヤーの人間臭さが感じられて新鮮だ。

 そして、これだけ細かい部分まで聴き取れるのに聴き疲れしにくいのもいい。1万円のイヤホンの10倍いい音がするとまでは言わないが、3~4倍はいい音がすると言えるのではないかと思う。