米国・ラスベガスで2018年1月9~12日まで開催されたIT・家電の総合展示会「CES 2018」で、オーディオ関連のトレンドの中心にあったのは、「完全ワイヤレス」「AI」、そして「アナログ」だ。

 完全ワイヤレスのイヤホンは、昨年から多数のメーカーが参入しているが、今年らしい切り口はスポーツ仕様が増えていること。国内ブランドでは、ソニーが完全ワイヤレスイヤホンの第2弾「WF-SP700N」を発表。IPX4の防滴対応にするとともに装着時のフィット感を高めた。サウンドのセッティングは同社の「EXTRA BASE」をベースとした重低音サウンドだ。

 同じく国内メーカーによるスポーツ志向の完全ワイヤレスイヤホンでは、JVCの「HA-ET90BT」があった。IPX5の防水に対応。また完全ワイヤレスで心配な装着性も、3ポイントで支える構造で安定性を確保した。

ソニーのスポーツ向け完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP700N」は179ドル
ソニーのスポーツ向け完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP700N」は179ドル
JVCの「HA-ET90BT」は米国で3月発売。価格は149.95ドル
JVCの「HA-ET90BT」は米国で3月発売。価格は149.95ドル

 本格的なスポーツメーカーの製品としては、JABRAの「Elite 65t」にも注目だ。加速度センサーを搭載し、位置情報もトラッキング。IP56の防水/防汗/防塵性能を備えるなど、フィットネス志向が強い。人気の完全ワイヤレスイヤホンは、ただ音楽を聴くだけでなく、スポーツ仕様に特化した作りになっているのが今年の傾向だった。

JABRAの「Elite 65t」はスポーツ向けの多機能を搭載で170ドル前後
JABRAの「Elite 65t」はスポーツ向けの多機能を搭載で170ドル前後

Googleアシスタント&Amazon Alexaがオーディオでも定番に

 CES 2018全体を通して、大きなトピックとなっていたのがAIだ。入場口まで常に長蛇の列が出来ていたグーグルのブースでは、Googleアシスタントに対応した国内外のスマートスピーカーやヘッドホン・イヤホンが展示されていた。

CES 2018に初めてブースを出展したグーグル
CES 2018に初めてブースを出展したグーグル
ラスベガスの街中をラッピングしたモノレールが走る。「Hey Google」がジャックした
ラスベガスの街中をラッピングしたモノレールが走る。「Hey Google」がジャックした
国内外のブランドのGoogleアシスタント対応スピーカーが集結
国内外のブランドのGoogleアシスタント対応スピーカーが集結
JBLによるGoogleアシスタント対応のスピーカー、ヘッドホンの製品群
JBLによるGoogleアシスタント対応のスピーカー、ヘッドホンの製品群

 スポーツ志向の完全ワイヤレスイヤホンとして紹介したソニーのWF-SP700Nは、Googleアシスタントに対応。ソニーは、2017年以降に発売した主要ワイヤレスヘッドホン/イヤホンをアップデートでGoogleアシスタントに対応させる。

 同じくスポーツ志向のワイヤレスイヤホンとして紹介したJABRAの「Elite 65t」も、AIへの対応度でトップクラス。Googleアシスタントに加え、アマゾンの「Alexa」、アップルの「Siri」と3つの音声アシスタントをカバーする。

 AI関連でユニークな存在なのが、LINEの完全ワイヤレスイヤホン「MARS」だ。イヤホン内蔵のマイクでLINEの音声アシスタント「Clova」に対応。さらに、韓国ネイバーの翻訳技術「NAVER Papago」を利用したリアルタイムの翻訳機能も搭載する。日本語対応の予定はまだないようだが、期待度は大だ。

ソニーの新完全ワイヤレスや旧モデルもアップデートで「Googleアシスタント」対応
ソニーの新完全ワイヤレスや旧モデルもアップデートで「Googleアシスタント」対応
Clova対応とリアルタイム翻訳というユニークな付加価値の付いたLINEの「MARS」
Clova対応とリアルタイム翻訳というユニークな付加価値の付いたLINEの「MARS」

米国ではアナログレコードは復活から拡大へ

 「アナログ」も米国では特に人気のキーワードだ。テクニクスは、昨年から予告していたハイエンドのターンテーブル「SP-10R」、ターンテーブルシステム「SL-1000R」を正式発表。新開発のコアレス・ダイレクトドライブ・モーターを搭載し、世界最高レベルの安定した回転を実現した。制御ユニットはメインユニットから分離した別きょう体で、新開発の「不要ノイズ低減回路」を搭載し、ノイズの低減も図ったハイエンド仕様だ。

超ハイエンドのターンテーブル「SP-10R」は1万ドル前後、ターンテーブルシステムの「SL-1000R」は2万ドル前後
超ハイエンドのターンテーブル「SP-10R」は1万ドル前後、ターンテーブルシステムの「SL-1000R」は2万ドル前後

 オーディオテクニカは米国で多数のターンテーブルをラインアップしているが、最新モデルとして「AT-LP7」を追加。ベルトドライブ方式のアナログターンテーブルで、価格は799ドル。Hi-Fi用途も意識した、ミドルレンジクラスだ。

オーディオテクニカはミドルクラスの「AT-LP7」を発売。799ドル
オーディオテクニカはミドルクラスの「AT-LP7」を発売。799ドル

 アナログ・レコードの再生は、合理性を突き詰めた「ワイヤレス」や「AI」と全く逆行する流れ。だが、音楽好きの趣味の世界として、ベテランから若者、そしてその先へと広がり始めているのが興味深い。

(文/折原一也)

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