米国・ラスベガスで2018年1月10日から開催していた「CES 2018」。家電ショーからスタートしたCESで毎年、注目されるのが薄型テレビだ。2018年のトレンドは何かというと「有機EL」「高画質回路」「AI」の3分野だった。

 1つ目の「有機EL」については、日本で製品を販売するブランドとしてソニー、パナソニック、LGが新製品を発表した。

ソニーは米国向けの有機ELテレビ「A8F」シリーズを発表
ソニーは米国向けの有機ELテレビ「A8F」シリーズを発表
2017年モデルからの変更はデザインのみ
2017年モデルからの変更はデザインのみ

 ソニーは米国向けの有機ELテレビ「A8F」シリーズを5月から65/55型で発売。現行機種「A1」シリーズからの変更点はデザインで、直立タイプのスタンドを採用した。画面を振動させて音を出す「アコースティックサーフェス」は引き続きの搭載となる。

 パナソニックは欧州向けの4K有機ELテレビとして、「FZ950」シリーズと「FZ800」シリーズを欧州で発売。こちらは色再現性を向上させた。

 LGは「LG AI OLED TV ThinQ」の新ブランドで「W8」「G8」「E8」「C8」「B8」とデザイン別に5ラインを展開する。

パナソニックの有機ELテレビ「FZ950」シリーズ
パナソニックの有機ELテレビ「FZ950」シリーズ
LGの有機ELは新たに「LG AI OLED TV ThinQ」にブランド名を変更
LGの有機ELは新たに「LG AI OLED TV ThinQ」にブランド名を変更

ソニー、パナソニック、LGが「高画質回路」で勝負

 CES 2018でソニー、パナソニック、LGの3社がそろって強調していたのが、2つ目のトレンド、自社製の高画質回路だった。

 ソニーは2018年の有機ELテレビに搭載した4K高画質回路「X1 Extreme」に加えて、8K映像に対応した新回路「X1 Ultimate」を展示。ブース内では、現時点で市販品には存在しない8K/1万nitsという超高画質パネルと組み合わせたデモ機で、まさに次世代の高画質技術をアピールしていた。

ソニーは8K映像にも対応する次世代高画質プロセッサ「X1 Ultimate」を発表
ソニーは8K映像にも対応する次世代高画質プロセッサ「X1 Ultimate」を発表
CES 2018全体でも圧倒的に高画質だった8K/1万nitsのデモ
CES 2018全体でも圧倒的に高画質だった8K/1万nitsのデモ
「X1 Ultimate」を4K映像に適用しても非常に高画質
「X1 Ultimate」を4K映像に適用しても非常に高画質

 パナソニックは高画質回路「HCX」の新たな技術として、色正確性を決めるための機能「3Dルックアップテーブル」を明るめのシーンと暗めのシーンで使い分ける技術を発表。ハリウッドのスタジオでも採用されている4K有機ELテレビ「EZ1000」の画質から、さらに原画忠実に磨きをかけている。

 LGは新たに高画質回路「α9」を発表し、2018年モデルから採用をスタート。ノイズ処理の高精度化、3Dルックアップテーブルによる高精度の色再現性を向上させた。

パナソニックは高画質回路「HCX」を発表
パナソニックは高画質回路「HCX」を発表
明るい映像と暗い映像で回路を変えることで中間階調をより正確に表現
明るい映像と暗い映像で回路を変えることで中間階調をより正確に表現
LGは今回初めて高画質回路「α9」を大々的に発表
LGは今回初めて高画質回路「α9」を大々的に発表
4段階のノイズ処理とオブジェクト検出を高精細化した
4段階のノイズ処理とオブジェクト検出を高精細化した

 薄型テレビの画質はパネル性能と高画質回路の掛け算で決まる。有機ELパネルは、各社が横並びでLG製を採用している今、画質を差異化する重要なポイントとして、高画質回路が再び脚光を浴びている。

LGが先行した薄型テレビの“AI対応”

 薄型TVの新機軸を示すキーワードとして、CES 2018で急浮上したのが、3つ目のトレンド「AI」だ。LGは2018年に発売予定の有機ELテレビ「LG AI OLED TV ThinQ」で、名前の通り全面的にAIテクノロジーを組み込む。独自の音声アシスタント技術「LG ThinQ」とグーグルの音声アシスタント技術「Google Assistant」の両方に対応し、薄型テレビを音声で操作するという体験を身近にしてくれる。

 音声アシスタントというと、ニュースや天気予報を調べるといった使い方が一般的だ。だが、LGのデモでアピールされていたのが、テレビ番組に出演している俳優に対して「この人は誰?」と尋ねると結果がリストアップされたり、「この番組が終わったら電源を落として」と声をかけると番組終了後に電源が切れたりなど、番組表とマッチングしたテレビ特有の機能だった。

薄型テレビとして新機軸を示すのはAIへの対応だ
薄型テレビとして新機軸を示すのはAIへの対応だ
「この人は誰?」というような番組内容に即した質問にも答えてくれる
「この人は誰?」というような番組内容に即した質問にも答えてくれる
「Google Assistant」ではニュースや天気予報、地図を調べて、テレビ画面に表示する
「Google Assistant」ではニュースや天気予報、地図を調べて、テレビ画面に表示する
「10年前のグランドキャニオンの写真は?」と声をかけ、テレビ画面に写真を呼び出す
「10年前のグランドキャニオンの写真は?」と声をかけ、テレビ画面に写真を呼び出す

 インターネットに接続され、多機能化した薄型テレビは「スマートTV」という言葉で登場したが、レスポンスの悪さやテレビのリモコン操作の手間もあって、映像配信サービスのコンテンツを視聴する以外に活躍の場は少なかった。今、各メーカーは新たに音声アシスタントを薄型テレビに組み込むことで、テレビをAIプラットフォームを活用するためのいちツールとする提案に軌道修正している。

エアコンや照明など、スマート機器とも連携する
エアコンや照明など、スマート機器とも連携する
リビングで使用するならテレビに向かって話しかけるのは自然。「スマートスピーカー」でなくてもいい
リビングで使用するならテレビに向かって話しかけるのは自然。「スマートスピーカー」でなくてもいい

(文/折原一也)

この記事をいいね!する