IT・家電業界の年初の恒例イベントとも言える総合展示会「CES 2018」が、2018年1月10日から米国・ラスベガスで開催された。日本からの出展メーカーで最も注目を集めたメーカーは、AV製品をはじめ、さまざまなコンシューマー向けプロダクトを擁するソニー。開幕に先立つプレスカンファレンスで披露された内容を中心に、2018年のソニーの戦略をチェックする。

CES 2018プレスカンファレンスに登壇したソニーの平井社長
CES 2018プレスカンファレンスに登壇したソニーの平井社長

4K有機ELテレビを発売も、注目は8K対応「高画質プロセッサ」

 ソニーがCES 2018で、新製品のトップとして紹介したのが、4K有機ELテレビの2018年モデル「A8F」シリーズと液晶テレビ「X900F」。ただ、注目されたのは、同時に披露された次世代の高画質プロセッサ「X1 Ultimate」のプロトタイプだ。なんと「8K」の映像信号処理にまで対応している。実際、ソニーブースでは、独自のバックライト技術を組み合わせ、最高値1万nits(明るさを表す単位。1nitは1カンデラ毎平方メートルと同義)の8K/HDRという、現在考えられる最高峰のディスプレーを披露していた。

 ソニーは8Kへ一直線化か? というと、8Kはあくまで技術デモ。液晶テレビ、有機ELと他社製パネルの供給を受けている今、ライバルメーカーと差異化するポイントは自社の高画質プロセッサだと改めて訴えた形だ。

4K 有機ELテレビの2018年モデル「A8F」を発表
4K 有機ELテレビの2018年モデル「A8F」を発表
現行の「X1 Extreme」の約2倍のリアルタイム画像処理能力を持つ8K対応プロセッサ「X1 Ultimate」
現行の「X1 Extreme」の約2倍のリアルタイム画像処理能力を持つ8K対応プロセッサ「X1 Ultimate」
ソニーブースでは8Kパネル&1万nitsのディスプレーのプロトタイプをデモ
ソニーブースでは8Kパネル&1万nitsのディスプレーのプロトタイプをデモ
4K有機ELテレビの「A8F」は、2017年モデル「A1E」からのデザイン変更が中心。スタンドが小さくなった
4K有機ELテレビの「A8F」は、2017年モデル「A1E」からのデザイン変更が中心。スタンドが小さくなった

オーディオはノイズキャンセルのワイヤレスヘッドホンで勝負

 人気のオーディオでは、ノイズキャンセルに対応したスポーツタイプの完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP700N」を発表。ワイヤレスイヤホンの分野では、ノイズキャンセルで差別化していく。

 3.1chサウンドバーとして初のDolby Atmos対応となる「HTZ9F」も発表し、オーディオは引き続きプレミアムクラスの新製品が勝負どころといったところだろう。

ワイヤレスイヤホンも多数発表
ワイヤレスイヤホンも多数発表
ノイズキャンセル対応でスポーツ向けの完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP700N」発表
ノイズキャンセル対応でスポーツ向けの完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP700N」発表
3.1chサウンドバーとして初のDolby Atmos対応となる「HTZ9F」
3.1chサウンドバーとして初のDolby Atmos対応となる「HTZ9F」

得意のイメージセンサーを車載へ本格展開へ

 ソニーが現在、最も強みを発揮している製品カテゴリーがカメラ用のイメージセンサー だ。ソニーの平井社長は以前から、センサーの車載用途に興味を示してきたが、具体的な製品や技術は明らかにしていなかった。だが、CES 2018のプレスカンファレンスでは、完全自動運転社会を見越した車載向けイメージセンサーを紹介し、BOSCH、デンソー、MOBIL EYE、NVIDIAなどのパートナーに提供を始めていると発表した。

 完全自動運転時代になると、クルマの周囲の状況を認識する“クルマの目”ともいうべきイメージセンサーの需要は高く、求められる性能は幅広い。特に人の目を超える認識精度は安全確保に寄与する。ソニーらしさのポイントとして、イメージセンサーを販売するだけでなく、相手先に合わせたセンサー開発にも参加していくとしている。

近年ソニーが最も成功している分野がイメージセンサーだ
近年ソニーが最も成功している分野がイメージセンサーだ
イメージセンサーにより人間の目以上の安全性を確保
イメージセンサーにより人間の目以上の安全性を確保
ソニーがイメージセンサーで協力しているメーカーも公開
ソニーがイメージセンサーで協力しているメーカーも公開
ブース内でもイメージセンサーのHDR表示で人間に見えない暗がりを確認できる様子をデモしていた
ブース内でもイメージセンサーのHDR表示で人間に見えない暗がりを確認できる様子をデモしていた

ロボット「aibo」は海外展開も視野

 ロボット犬「aibo」の復活――日本では2017年11月に発表済みのニュースも、海外の報道陣には初披露ということで、aiboを本物の子犬のように優しく抱える平井社長の姿に関心が集まった。

 aiboはAI、ロボティクスといった最新分野が集結したデバイスで、ソニー自前のAIプラットフォームで開発。社長直轄で、わずか1年半で完成にこぎつけた。新しいモノに取り組む“ソニーらしさ”を象徴するニュースとして、海外メディアへのインパクトは大きい。なお、製造に手間のかかる製品のため、時期は未定だが、海外展開も考えているとのこと。

ロボット犬「aibo」の復活を海外初の発表
ロボット犬「aibo」の復活を海外初の発表
平井一夫社長が優しく抱える姿を報道陣は熱心に撮影
平井一夫社長が優しく抱える姿を報道陣は熱心に撮影
「aibo」の愛らしい姿は海外メディアからも好評。海外展開も検討中という
「aibo」の愛らしい姿は海外メディアからも好評。海外展開も検討中という
AI、ロボティクスともにソニーの自社技術を集結
AI、ロボティクスともにソニーの自社技術を集結

 プレスカンファレンスでは、平井社長はその他の分野についても言及。カメラ関係は新情報の発表こそなかったが、2017年のヒット商品となったデジタル一眼の「α9」や「RX0」が引き続き好調のようだ。また、ゲーム機のPlayStation(PS)ファミリーは、PS4の販売台数が7360万台、PS VRの販売台数が200万台をそれぞれ突破。2017年は、映画や音楽レーベルを含むさまざまな領域でヒットを生み出したことをアピールした。

ハイエンドデジタル一眼の「α9」は成功分野としてプレスカンファレンスでも真っ先に報告された
ハイエンドデジタル一眼の「α9」は成功分野としてプレスカンファレンスでも真っ先に報告された
PS4やPS VRも順調に販売台数を伸ばしている
PS4やPS VRも順調に販売台数を伸ばしている
2017年のヒットとされたのがスライドの映画4タイトルと『ブレードランナー2049』
2017年のヒットとされたのがスライドの映画4タイトルと『ブレードランナー2049』
ソニー・ミュージックの2017年の代表作
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(文/折原一也)

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