バラ煮込みの、温かさの秘密が分かった

 だから、福田さんは行列店にだけはしたくないのだそうだ。「田舎があって東京で頑張っているって子が、実家からおとうちゃんを連れて来たこともあるよ。同い年ぐらいの子がここで出会って仲良くなることもある」。

 先ほどの常連のご婦人が付け加えた。「このマスター、女好きだからさ、若い子のファンクラブもあるんだよね。どう思う?」。

 どう思うと言われても(笑)。ただ、このマスター、女性にはモテそうな気がする。

 話を聞いているうちに、バラ煮込みの温かさの秘密が分かったような気がした。作っている人が温かいのだ。そして、味に深みがあるのは、人情の深さなのだろう。

温かさを感じるバラ煮込み
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 よく「都会のオアシス」などという言葉を聞くが、今まであまりしっくりくることがなかった。しかし、きむきむにはしっくり来る。

 地元の人も地方から来た人も来る。近くに住んでいる人も働いている人も来る。学生も会社員も来る。年齢層も幅広い。客層は様々だが、みんなが安らぎを求めているのは共通している。砂漠でオアシスを見つけてホッとする気持ちに近いものがあるのだろう。

 これから先、常連さんが別の常連さんに会いたくてやってくるのに違いない。名残惜しいが、狭い店である。その邪魔になる前に、きむきむを後にしたのだった。

きむきむは「都会のオアシス」だ
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取材情報
■取材日: 2015年2月12日、2月27日
■店 名: やきとり きむきむ 大井町店
■住 所: 東京都品川区大井1-2-20
森川 滋之(もりかわ・しげゆき)
広告戦略コンサルタント、ライター
森川 滋之

1963年金沢生まれ。本籍大阪。千葉育ち・在住。京都大学文学部卒業後、東洋情報システム(現TIS)に入社。20以上のプロジェクトのリーダーを務めた後、セールスレップとして転職。2005年 にITコンサルタントとして独立。その後様々な事業に手を出すが、激しい浮き沈みを体験。本業の傍ら、収入の安定のために企業のPRライターとしてキャリアを積むうちに、マーケティングと広告に関する独自の方法論「G9M」を構築、「売り込まないで差別化する」広告戦略コンサルタントとして、大手IT企業から中小製造業まで、主にBtoB企業の広告戦略策定を支援している。著書に『奇跡の営業所』(きこ書房)、『SEのための「不況に強い」 営業力のつけ方』(技術評論社)などがある。医者の冷たい目に耐えながら、週に2日以上は飲みに行く生活を継続中。