「悪い客が来ない」

 そろそろ帰ろうかという時に、僕より少し年上と思われるご婦人が入ってきた。会社帰りらしい。マスターに差し入れをして、今日は来ていないお客の話を始めた。ちょっと割り込ませてもらって、質問してみた。

「こちらには、どのぐらいの頻度で来られるんですか?」

「2日に1度ぐらい、いや、ほとんど毎日かな」

「それはすごい。どこがそんなに気に入っているんですかね?」

「やる気がないというか(笑)、商売っ気のないマスターがいて、悪い客が少ないところだね」

 福田さんが引き取る。「人間が好きなんだ。お客さんとは友達感覚。冬は1人でやってるから飲まないけど、バイトがいる時期ならお客さんと飲むこともあるよ」。

 でも、いや、だからこそか、お客さんの好き嫌いははっきりしているのだと言う。「自分は客だから(偉そうにしていい)っていうのはまず嫌い。あと、周りに迷惑を掛ける客にはどなることもあるよ」。

 それなら、悪い客は寄り付かないだろう。店側も勘違いしているところが多いという話にもなったが、そこは割愛。ただ、福田さんと僕とで、良いと思う店が似ているのが面白かった。

「お客さん同士が仲良くなってくれるのがいいよね。個室の店なんてのは面白くない」

「お客さんとも良く話をしているようですけど」

「1人で来るお客さんって何かあるんだよ。女性は特にそう。話がしたいと思って来るんだよね。そういう人がスッと入れる店にしたい」