この記事は「nikkei BPnet」に2015年1月29日に掲載された「常連が「最後のとりで」と呼ぶ店」を転載したものです。内容は基本的に掲載日時点のものとなります。
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東京メトロ白金高輪駅から徒歩3分。魚籃(ぎょらん)坂下にある「大船」は、創業60年の老舗やきとり屋だ。近所の会社に勤める人を除けば、地元の常連客ばかりだが、店員もお客も人懐こい人ばかりで、まったく排他性がない。ただ、有名になってお客が増えると自分たちが入れなくなるのが心配だ、と常連さんたちが口をそろえるので、団体で押しかけないようにはお願いしたい。

 昨年、2014年6月23日の夕方、僕はJAGZY編集長の渡辺博則氏と新コラム企画の打合せをするために、東京メトロ白金高輪駅から地上に出たところにある日経BP社を訪れた。僕が提案したのは、「常連さんの集まる、すがれたやきとり屋を紹介する」という企画だった。

「じゃあ、まずは現場に行ってみて、アイデア出しをしましょうよ」と編集長が言う。近所にぴったりの店があるというのだ。それが、今回紹介する「大船」だ。大船は、いわばこのコラムの“発祥の店”でもある。

JAGZY編集長の渡辺博則氏。「年齢は口元に出るとカメラマンさんが言っていたので、そこは撮らないでくれい」とのこと
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イメージ通りの店

 僕のイメージ通りの空間が、そこにあった。1階はカウンターで立ち飲み。詰めれば12人ぐらいは入れるぐらいのスペースだ。立ち飲みでなくてもいいが、置くなら固定式の丸椅子が似合う。

「何年ぐらいやってるんですか?」と聞くと、60年になるという。カウンターに立つ若い人が3代目で、奥で焼いている人が2代目らしい。初代店長はもう亡くなったとのこと。ずっと魚籃坂下に店を出しているのだが、15年前に現在の店舗に引っ越したのだそうだ。

 さて、この連載もなかなかイメージ通りのお店を探すのが大変。それで2~3店取材したところで、編集長に「そろそろ大船に行きましょうよ」と打診したら、「いや、あそこは10店ぐらい行ってから、改めて行くのがいいような気がする。何となくだけど」と言うのである。

 しかたなく、試行錯誤しながら取材を進めてきたのだが、気が付けば12店を取材していた。年も明けたので、改めて編集長に打診したところ「じゃあ、行きましょうか」ということになり、約半年ぶりに2人で訪れたのである。