AI(人工知能)を進化させ、その用途を広げているのが「ディープラーニング:Deep Learning」(深層学習)と呼ばれる技術だ。ディープラーニングとは何か、どのように活用されているのか。その第一人者であるエヌビディアの村上真奈氏と、ABEJAの岡田陽介氏がTREND EXPO TOKYO 2016に登壇。注目の技術を解説した。

 最初は、ディープラーニングの研究に注力しているエヌビディアのディープラーニング部 ディープラーニング ソリューションアーキテクト CUDAエンジニア 村上真奈氏が登壇。

村上真奈氏 エヌビディア ジャパン ディープラーニング部 ディープラーニング ソリューションアーキテクト CUDA エンジニア
村上真奈氏 エヌビディア ジャパン ディープラーニング部 ディープラーニング ソリューションアーキテクト CUDA エンジニア

 「第三次AIブームをけん引しているディープラーニングの技術は、人間の脳を模倣した仕組みで判断や意思決定をコンピュータで行うというものです。人間の脳には100億以上の神経細胞(ニューロン)があると言われています。このニューロン同士のつながりを関数で表現したのがニューラルネットワークで、多層化したものをディープニューラルネットワークと呼びます。ディープラーニングではこのネットワークを使って学習や推論を行います」と、ディープラーニングの基本を解説。

 例えば、イヌとネコの写真を見たときに、人は瞬時に、それがイヌなのかネコなのかを判断できる。これは経験により、どんな耳や鼻、目や手を持っている動物がイヌなのか、あるいはネコなのかを判別する学習を繰り返してきたからだ。

 そこで同様に、イヌやネコの膨大な画像データをコンピュータに読み込ませ、学習させていく。そうした学習をより多層化、より深層化することで、複雑な認識や判断が行えるようになるという。

日本から世界的なイノベーションを生み出す

岡田陽介氏 ABEJA 代表取締役社長 CEO兼CTO
岡田陽介氏 ABEJA 代表取締役社長 CEO兼CTO

 ディープラーニングの応用事例は、世界に限らず日本でも加速度的に増えているという。例えば自動運転技術や医療、新薬の開発、教育など、ジャンルは多岐にわたる。そんな中で、ディープラーニングを来店者の行動解析に使うことで、店舗運営の最適化につなげるというプラットフォームが「ABEJA Platform for Retail」。同プラットフォームを開発した、ABEJAの代表取締役社長 CEO兼CTO、岡田陽介氏が実例を語った。

 「IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、そしてAIは、第四次産業革命の核となる技術です。なかでもAI、ディープラーニングは、ものすごい可能性を秘めたもの。そこでABEJAは、ディープラーニング技術を、小売・流通業にABEJA Platform for Retailという、誰もが使いやすいプラットフォームとして提供しています」

 ABEJA Platform for Retailでは、カメラを設置することで、来店客の人数、性別や年齢などを把握し、店舗内で来店者がどう動いたかなどを可視化する。そうしたデータを分析することで、「どんな商品をどう並べるか、レイアウトや在庫、従業員シフトの最適化など役立てられます」と岡田氏。

 このABEJA Platform for Retailは、三越伊勢丹ホールディングスや東急ストア、GEOやJUNなど、2016年10月末時点で200店舗以上の導入実績がある。ABEJAはさらにダイキン工業と協業し、ABEJA Platform for Retailの基盤技術でもある、PaaS(Platform as a Service)「ABEJA Platform」を、技術製造業でも活用できるよう研究開発を始めたという。

 「こうしたサービスを継続し、事例を作っていくことで、日本から世界的な大きなイノベーションを生み出せるのです。そしてみなさんと一緒に日本の産業構造を変えていき、世界に打って出たいと考えております」と、岡田氏はアピールした。

(文/河原塚英信、写真/中村宏)

この記事をいいね!する