2016年のヒットの傾向をまとめる日経トレンディ、伊藤健編集長
2016年のヒットの傾向をまとめる日経トレンディ、伊藤健編集長

 TREND EXPO TOKYO 2016の初日のラストセッションは、日経トレンディが発表した「2016年ヒット商品ベスト30」の表彰式。すでにランキング自体は、11月3日に発表していることもあり(関連記事:【速報】2016年ヒット商品1位は「ポケモンGO」)、このセッションでは上位に入賞した企業の表彰に加えて、商品開発のキーパーソンを招いてヒットの秘訣について解説する記念講演が行われた。

 冒頭、挨拶に立った日経トレンディの伊藤健編集長は、2016年12月号で創刊30年目に突入したことに触れつつ、「iPhone、つまりスマートフォンの発売から約10年がたち、トレンドも一つの節目を迎える結果になった。上位5つの商品・サービスのうち、SNSによるクチコミで火が付いた『君の名は。』も含め、4つがスマホに関連したヒット商品でした」と全体の傾向をまとめた。

 続いての表彰式ではヒット商品ベスト30のうちベスト10の商品・コンテンツに記念の盾が用意された。誰もが認める大ヒットとなった1位の『ポケモンGO』と2位の『君の名は。』の関係者に加えて、「『商品』より『サービス』、『モノ』より『コト』が上位を占める中で、単独の商品として大健闘した」と評価された、6位「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」のロッテ副社長が登壇。伊藤編集長から記念の盾が贈られた。

1位となった『ポケモンGO』は、株式会社ナイアンティックのアジア統括マーケティングマネージャー・須賀健人氏(左)と、株式会社ポケモンよりPokemon GO推進室室長・江上周作氏が登壇した
1位となった『ポケモンGO』は、株式会社ナイアンティックのアジア統括マーケティングマネージャー・須賀健人氏(左)と、株式会社ポケモンよりPokemon GO推進室室長・江上周作氏が登壇した

夏休み終盤に公開してもヒットした理由とは?

 『君の名は。』「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」の表彰では、登壇者が自らヒットの秘訣を語る、記念講演が行われた。

古澤佳寛氏 東宝 映像本部 映像事業部 映像企画室長/『君の名は。』エグゼクティブプロデューサー
古澤佳寛氏 東宝 映像本部 映像事業部 映像企画室長/『君の名は。』エグゼクティブプロデューサー

 東宝の『君の名は。』エグゼクティブプロデューサー・古澤佳寛氏は、同作品のヒットの要因について、一番は新海誠監督のクリエーターとしての力としながら、「一般的にヒット映画に必要と言われているモノがなかったことが逆に良かった」と分析した。例えば『君の名は。』は新海監督の完全オリジナル作品のため、ヒット作に必要と言われる「大ヒット有名原作」ではなかったが、「知らないお話だからこそ、観客の予想を上回る感動を生むことができた」という。

 加えて、テレビ局の出資、大型宣伝バックアップもなかったが、SNSで若い世代を中心にクチコミが広がった結果、「多くのテレビ番組に取り上げられ、これが幅広い世代に広がっていった」と、ヒットが世代を超えた理由を解説した。

 また、大作映画は大型連休に合わせて公開されることが多いが、「公開が夏休みの終わりだったのも、功を奏した」と古澤氏。観客の多い夏休み公開の大作で予告編を流せたこと、「(夏休みの終わりは)大作公開後で映画館が空く時期なので、上映スクリーン数をうまく確保できた」ことが、その理由だ。

 映画は現在も公開中だが、すでに興行収入は189億円を超えており、200億円の大台も見えてきているという。

ヒットの理由は運だった「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」

 続いて、「スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ」が6位にランクインしたロッテから取締役副社長兼CMO・河合克美氏が登壇。同商品が「マーケティング戦略をベースに開発された初の商品」だったことが明かされた。

河合克美氏 ロッテ 取締役副社長兼CMO
河合克美氏 ロッテ 取締役副社長兼CMO

 とはいえ「マーケティング統括部に怒られる」と笑いながら「ヒットの要因はあくまでも運だった」と語り、会場を驚かせた。当初は食事の代替需要を狙い、「不規則な食事の合間に適時食べられる“適時食”として開発したが、腸内環境が注目を集めるようになり、その時流にいち早く乗れたのが良かった」という。

 一方で、開発の過程でチョコに乳酸菌を加えると、予想以上にさまざまなメリットを生み出した点もポイントだったようだ。

 「乳酸菌をある条件でチョコレートに混ぜると耐酸性がアップし、常温で長期間保存可能になる。乳酸菌関連マーケットでユーザーが抱えていた、すぐエネルギーにならない、保存が難しい、賞味期限が短いといった不満は、すべて我々の商品で解決ができる。これがヒットにつながった」と分析した。

 表彰式の最後には日経トレンディの発行人で日経BP社の執行役員 コンシューマ局長・渡辺敦美が挨拶に立ち、「ヒット商品は人が作り出すもの。裏には必ずストーリーがある。そのストーリーを皆様にお伝えできるような形で、表彰式をやりたいという夢がかないました。来年以降もぜひ続けていきたい」と抱負を語り、表彰式は終了した。

(文/太田百合子、写真/中村宏)

この記事をいいね!する