毎年、ひとつのテーマに特化した「○○手帳」が登場している。どちらかというと、テーマに沿ったデータが充実しているわりには手帳としての使い勝手は芳しくないという印象があるなか、使いやすさもとことん追求して誕生から2年目ながらファンがついている手帳がある。それが「名画座手帳」。映画関係者や作家、音楽家までがほれ込む手帳の人気のヒミツを作者に聞いた。

トマソン社「名画座手帳2017」(1500円)
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 「名画座かんぺ」というフリーペーパーがある。B4用紙1枚に表裏、手書きで書かれた名画座情報は月1回発行。旧作の特集上映を中心にした上映情報や劇場の案内、さらには映画関連の情報やコラムで構成されている。このフリーペーパーをひとりで作っているのが、のむみちさん。

 のむみちさんは文房具好きで手帳が大好きだった。毎年、どの手帳を使おうかと悩むのは手帳好きの恒例行事のようなものだが、どうせなら、自分が使いやすい、そして名画座かんぺの読者にも喜んでもらえる手帳を作ってしまおうと、2016年に4月始まりの「名画座手帳2016」が誕生した。

「名画座かんぺ」は、B4用紙1枚に、手書きコピーで名画座情報が書き込まれたフリーペーパー。六つ折にした形で配布されている
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「名画座手帳」は、手書きの推薦文が付いた帯も話題。2016年は小西康陽さん、太田和彦さん、2017年は高橋洋二さん、宝田明さんが推薦文を寄せている。帯を外したくないというユーザーも多いとか
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 「本当は1月始まりのものを出したかったんですよ。でも手帳を作るのは初めてのことで、何も分からないから時間がかかってしまって」と、のむみちさん。しかし、名画座手帳を見ると、遅れたのももっともだと思えるほどの凝りようだ。しかも、その凝りようは、名画座手帳であること以上に、使える手帳としての完成度を上げる方向でこだわっているのだ。手帳を長く見続け、手帳の原稿を多く書いている筆者から見ても、その仕上がりは、名画座ファンが作ったというよりも手帳マニアが作ったといったほうがしっくりするほど。いわゆる「○○手帳」のイメージとは明らかに一線を画す、“名画好きにも便利”な手帳だ。

名画座手帳を作った、フリーペーパー「名画座かんぺ」発行人、のむみちさん
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 「昔ながらのポケットサイズの手帳が好きなんです」という彼女が愛用していたのは能率手帳。「ただ、そのサイズだと、名画座かんぺを挟んだときに、ちょっとはみ出すんですよ」ということで、B4用紙を六つ折りにした名画座かんぺがちょうど入る、A6サイズを選択。

 さらに昔ながらの手帳のオマージュとして、小口が黒で塗られている。表紙はカバーなしの圧着タイプ。紙に表紙を直接貼り付ける、よく辞書の表紙などに使われている方法だ。これも、昔ながらの手帳によくあるスタイル。表紙には箔押しではなくエンボスで「名画座手帳2017」とだけ入れてある。

しっかりと平たく開くように、糸とじ製本を選択。メモページの方眼罫がノドの際まで入っているのは実はかなり珍しい
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 「私、手帳は開いたときの親指の当たり具合の良さがポイントだと思っています」という、のむみちさんのこだわりが詰め込まれた製本まわりもポイント。さらに裏表紙の内側には、名画座かんぺが挟めるポケット付き。ポケットにはスリットを入れ、チケットなども挟めるように作られている。カバーなしの製本なので、ポケットも圧着式でわざわざ付けてもらっているわけで、ここにも彼女の使い勝手の良さへの配慮が見られる。

 また、ユーザーから教えてもらったのだそうだが、このポケットがマルベル堂で売っている往年のスターのプロマイドにぴったりの大きさ。小林旭や大木実、若尾文子などのプロマイドを入れておける。

裏表紙の内側には名画座かんぺを挟むためのポケットを用意。ポケットにスリットを入れて、カードや名刺などを挟めるようにしている
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のむみちさんが勤める古書店「古書往来座」にある往年の映画スターのブロマイドコーナー。手帳はこのブロマイドがピッタリ収まるサイズ
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