高齢社会に突入し年間130万もの人々が亡くなる一方、葬儀を執り行い先祖の墓を守る側の人間は、少子化により減り続けている。直葬、散骨、共同墓、手元供養、墓じまい ── 核家族化や高齢ひとり暮らし世帯の増加といった社会の変容もあり、葬儀や埋葬に関わる状況は激変している。多死・人口減少社会の中で、日本人の死生観にどんな変化が起きているのかについて、葬儀や墓の事情に詳しい第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員に聞いた。

激変する葬儀、その背景にあるもの

小谷みどり(こたに・みどり)氏
第一生命経済研究所 主席研究員

大阪府出身。奈良女子大学大学院修士課程修了後、ライフデザイン研究所(現・第一生命経済研究所)に入社。博士(人間科学)。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。国内外の墓地や葬送の現場を歩き、大学で生活経営学や死生学などを教えている。主な著書に、『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』、『ひとり終活 不安が消える万全の備え』など。

この20年くらいで、亡くなった人の葬儀の簡素化が進んだということを実感しています。今は家族を中心とした身内だけで内々に行うことが主流になっています。

小谷:かつて葬儀は残された者たちの「義務」と考えられており、見栄や世間体もあって葬儀は盛大に行われていました。葬式をキチンと執り行わなければ世間体が悪いと考えられたのです。とりわけ地方では立派な葬式をしなければならないという一種の“圧力”があったと思います。そのために、近所のおばさんたちも葬式の手伝いに駆り出されていました。でも、核家族が当たり前になって、地域社会も大きく変わり、人づき合いも減り、世間体や見栄を気にする人は少なくなりました。

「世間体」や「見栄」を気にする、伝統的意識を持つ人たちが減ったために、葬儀の簡素化や多様化は進んでいった、と。

小谷:それも一つの要因だったと思っています。ほかにも原因を挙げれば、長寿化により故人が高齢のケースが増えたことも、葬儀のあり方に大きな影響を与えています。例えば故人が高齢であれば友人も少なくなりますし、葬儀に参列できる人もかなり減るためです。

 さらに、三世代同居の時代がすでに遠くなり、核家族やひとり暮らし世帯が増えたことも背景にあります。家族の形は大きく変容しました。日本では従来、葬儀は「家」の重要な儀式であり、人生の終末期から死後までの手続きや作業は子孫が担うべきだとされてきましたが、子供たちは成人後に両親と別に住むことが一般的になり、現実として、離れて住む親や親族の葬儀に労力や時間を割くことは難しくなりました。一方、親の側も、「家族に負担をかけたくない」と小規模の葬儀を望むことが増えており、簡素化に拍車をかけています。

核家族化で変容、日本人独特の死生観

死生観も変化している?

小谷:死に対する感覚は、核家族で育った人と、三世代が一つ屋根の下に暮らし仏壇が生活環境にあったような人とでは、大きく異なります。例えば家の鴨居にかけられていた先祖の写真、かつて各家で行われていた「お盆」の行事──そうしたものは、亡くなった人をしのぶ“装置”として機能していました。そこには日本人独特の死生観がありましたが、今ではそうした環境も失われています。そもそも「盆踊り」は本来、地域の人たちで死者を弔うための儀式でしたが、今では単なる夏祭りくらいにしかとらえられていないのではないでしょうか。こうした社会の変容も、伝統的な葬儀の衰退と関連しているのではないかと思います。