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 「シン・ゴジラ」を観て「何故ゴジラの襲来に対して自衛隊に防衛出動が下令されるのか、どうにも理解が出来ません」とブログに書いた石破茂・元防衛大臣。後編の今回は、ゴジラをきっかけに国家の有事について、もっと議論を深めるべきだと語った。

(聞き手は坂田 亮太郎)

※この記事には映画「シン・ゴジラ」の内容に関する記述が含まれています。

(前編はこちら

国家の防衛について語る石破茂氏(写真:的野 弘路)

石破:小泉内閣時代、私は防衛庁(現防衛省)の長官を拝命しておりました。当時、北朝鮮のミサイル実験や不審船・工作船の銃撃事件などが起きました。そうなると国民からは「北朝鮮、討つべし」という世論が盛り上がる。国会答弁で、ある議員から「防衛庁長官、日本は北朝鮮と戦ったら勝てるのか?」と質問されたことがありました。

 私は「北朝鮮に負けませんが、勝てません」とお答えしました。その意味するところは、自衛隊は陸も海も空も対外勢力からの攻撃を排除する能力は持っている。日米安全保障条約が発動して、日米共同体制で応戦することもできる。だけど、大変申し訳ないが、我が陸上自衛隊も、海上自衛隊も、航空自衛隊も、自衛隊だけで北朝鮮を攻撃するための能力は持っておりません。

 そう答弁するとですよ、「一機100億円もする『F15』を200機も持っているのに何事だ」となる。たしかに一機100億円でございますが、それは(領空に入ってくる)敵の航空機を排除する能力を与えられているのであって、北朝鮮まで飛んでいって、向こうのミサイル基地を叩く能力なんて持っていない。

 そもそも、今のままではどこに基地があるのかも分からない。飛んでいったら向こうの戦闘機だって応戦してくるでしょうし、対空ミサイルだって上がって来る。それを避けるために飛行すると、通常の水平飛行と比べて燃料消費量がものすごく多くなる。そうなると空中給油機を十分に持っていないと、そんな作戦は指示できないんですよ。当時、航空自衛隊は空中給油機を2機しか持っていませんでしたから。

 しかもF15には対地攻撃能力もない。それでも行けとおっしゃるのであれば、神風特攻隊と何が違うんですか?あなたは航空自衛隊の能力を分かって言っているのですか?と、逆に私が質問したいくらいでした。法律も知らない。自衛隊の装備のこともよく知らない。でもそう言う人が圧倒的多数なのが、日本の現実なのです。

自衛隊の装備は充実していると、考えている国民は少なくないでしょうね。

石破:例えば映画でもそうです。神奈川方面からゴジラが東京にやって来た。すると多摩川の河川敷に、最新鋭の戦車がズラーッと並んでいたでしょう。あの戦車、どこから、どうやって来たんでしょうね。

映画「シン・ゴジラ」では首都東京を防衛するため、多摩川の河川敷に戦車部隊が展開した。©2016 TOHO CO.,LTD.