彼女は今、「墓地設計家」を名乗っている。

 JR新宿駅から電車に揺られて1時間。横浜線片倉駅に降り立って、多摩丘陵の森の中を10分ほど歩くと、視界が急に開ける。「風の丘 樹木葬墓地」。これまで全く見たことがない墓地の姿が、視線の先にあった。

 梅雨前の6月上旬。快晴のもとで現地を訪れた記者は、素直に「これが墓地なのか」と思った。

風の丘 樹木葬墓地の全景(写真:全て吉成 大輔)

 まるで公園のようである。芝生で覆われたうねる大地の中を、曲がりくねった小さな道が貫通する。入り口には大きな水盤が設けられ、そこに小さな献花台がある。

 墓石は一つもない。骨壷が眠るのは芝生の下。35cm角の区画が割り当てられ、その個別区画に骨壷を埋葬する仕組みだ。区画数は約3000。この芝生の丘が、全体で一つの大きな墓である。森の中に現れた公園のような空間は、これまでの墓地のイメージを払拭するかのようなインパクトがある。

 通路の両脇に設けた金属板に埋葬された方の氏名の刻印が入る。芝生のどの辺りに眠るのかはその銘板で知る。

風の丘 樹木葬墓地を設計した関野らんさん

 設計したのは、一級建築士の資格を持つ関野らんさん。恐らく、「墓地設計家」を名乗るのは国内で彼女だけだろう。大学で建築・土木のデザインを学んだ彼女が設計する墓地に、関係者が熱視線を送る。これまで6カ所の墓地が完成し、未完成・進行中のプロジェクトを合わせると20カ所を超える。