首都圏某所にある、LUSH(ラッシュ)店内。甘い香りが漂い、野菜やフルーツ原料のフェイスマスクや、バスグッズなどが並んでいる。ラッシュはイギリス生まれの自然派化粧品ブランド。日本国内には約100店舗ある。

 店内では、若い女性従業員数名が接客をしている。その中に、23歳のAさんはいた。

 「お待たせしました。接客が長引いてしまって申し訳ありません」

 待ち合わせ時刻ぴったりだったが、店舗の入り口で待つ記者に、申し訳なさそうに声をかけてくれた。

 ロングヘアで明るい髪色。流行の太眉に、ぱっちりとした目。今どきの若い女性だ。

ラッシュ店舗の外観

エントリーシートも書けないし、説明会にも行けない

 Aさんは、男性の身体に生まれた。

 中高生の時期から、女性であることへの憧れがあった。男子の制服を着ていたが、髪の毛を伸ばしてボブスタイルに。好きになる対象は男性だった。

 大学に入ると、自分と同じような人に出会った。その頃から、Aさんの見た目も変わっていく。メイクをし、女性の服を着始めた。

 見た目は変化していったが、周りの友人たちは変わらず仲良くしてくれた。Aさんは仲の良い友人たちに、一人ひとりカミングアウトを始めた。「やっと言ってくれたね」「知っていたよ」温かい言葉をかけられ、居場所ができた、と感じた。

 地元の友人や、アルバイト先の友人にもカミングアウトした。皆受け入れてくれた。

 21歳のとき、両親にカミングアウトした。両親が、自分のような人に良い印象をもっていないのは知っていた。母親からは「受け入れられない」と言われた。着けていた女性向けの下着が見当たらなくなった。母親が没収していた。

 大学3年生の冬がきた。周りの友人は就職活動を始めた。しかしAさんはできなかった。

 「エントリーシートが書けないんです」

 Aさんの身体は男性だが、女性として生活している。女性として生きていきたいのに、男性の欄に〇をつけなければならないのがつらかった。

 「説明会にも行けませんでした。男性用のスーツを着るのに抵抗があったんです」

 男性の欄に〇をつけ、男性用のスーツを着て就活する……。その姿を想像すると、一歩踏み出せなかった。

 Aさんが動けずにいる中でも、周りはどんどん動き出す。

 焦りを感じたAさんは、「LGBT 寛容な会社」というキーワードで、インターネット検索してみた。LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字をとった性的マイノリティの総称だ。ヒットしたのは大企業ばかりだったが、その中にラッシュを見つけた。

 調べていくうちに、「WE BELIEVE IN LOVEキャンペーン―LGBT支援宣言―」など積極的なLGBT支援キャンペーンを行っていることが分かった。LGBT社員への支援制度も整っており、同性間のパートナーにも結婚祝い金や結婚休暇を付与すると規定している。取り組みが具体的だと感じた。