米アップルが今年秋にも発売するiPhoneの新モデルで、初めて有機ELパネルを採用する。中国のスマホメーカーも追随するとみられ、ほぼ液晶一択だったスマホ向けパネルの事業環境は大きく変化する。そうした状況の下、液晶時代から有機EL時代への切り替えに成功しつつある部品や素材メーカーに対し、パネルメーカーの見通しの甘さが際立っている。
米アップルはここ数年、クリスマス商戦を前に新型iPhoneを投入する。今年はiPhone登場10周年モデルとして、ハイエンドモデルに有機ELパネルを採用する見込みだ(写真:ロイター/アフロ)

 「スマホの有機ELシフトは、当社にはポジティブ」。住友化学の野崎邦夫専務は5月16日の決算説明会でこう述べた。同社は液晶パネルの主要部材である偏光板で、日東電工と並んで世界大手。パネルの中を通る光を制御する偏光板は、液晶パネルでは2枚使うが、有機ELだと1枚に減る。

住友化学は有機ELに内蔵する曲げられるタッチセンサーを増産する

 偏光板は住友化学の電子材料部門の収益をけん引してきた部材だ。使用量が半分になるアップルの戦略は痛手に見えるが、フィルム型の有機EL向けタッチセンサーは既に開発済み。18年1月に韓国拠点の生産能力を3倍に引き上げる計画だ。

 2018年3月期には電子材料の売上高は、前期に比べて7%増の3850億円を見込む。そのうちタッチセンサーや反射防止フィルムなど有機EL関連が前期より2割程度増える。野崎専務は「2020年か21年には電子材料の売り上げの半分が有機ELになる」と見通す。

 偏光板で住友化学と競う日東電工の高崎秀雄社長は「有機ELが(折り曲げられる)フレキシブルパネルになると、タッチパネル用フィルムや光学用の接着剤の使用が増える」と指摘。透明接着剤は同社の得意分野で「偏光板は1枚になるが、1台のスマホに搭載される当社の製品は液晶より金額ベースで20〜25%くらい増える」(高崎社長)と見込む。

 「何が来てもいいように張っていた」と話すのは、東レの阿部晃一副社長だ。液晶向けのポリエステルフィルムなどを手掛けるが、有機ELで使う絶縁材料などへ経営資源をシフトさせている。17年3月期のディスプレー材料分野の売上高は前期比4%増の727億円だった。液晶向けの出荷は減るが、有機EL向けでカバーした。