第3回の「日本で1億円の開発費、深圳だと500万円」は多くの方が読んでくださり、そこで書いたパブリックなマザーボード「公板」について詳しく聞きたいという問い合わせがきた。今回は公板が生み出されるエコシステムについて、より詳しく説明する。

機能が少なく、ボタンが大きい高齢者用の電話。深圳では特定の目的に向けた電話も多く作られている

 「日本で1億円の開発費、深圳だと500万円」で紹介したように、深圳ではコモディティ化したテクノロジーをモジュールにしたマザーボードである公板(Gongban、Public Board)、コモディティ化した外装が射出成形されたプラスティック素材である公模(Gongmo、 Public Prastic)が売られ、それを組み合わせたり一部分だけ追加機能をつけたりすることで、非常に高速に、かつ安易に新製品が「発明」されている。買ってきたカレーとトンカツを組み合わせてカツカレーを「発明」するようなものだ。

 一方で、そうした「アリモノ」の組み合わせで開発する会社がほとんどのため、スタートアップが本当にイノベーティブなハードウェアの製造を依頼したときにうまくいかず大幅に遅れることも多い。

 公板を使って高速に開発ができるなら、どこの国のハードウェアメーカーも使い出しそうなものだ。なぜ中国でだけ公板が出回るのだろう。

チップを売るために作られるようになった「公板」

 公板を設計するのは方案公司と呼ばれる企業群だ。もともと彼らの多くはインテルやクアルコム、メディアテックといった半導体企業のチップを取り扱う商社だった。なので、今も方案公司は、そういう外資系の大手チップメーカーが多い上海の周辺と、公板の買い手である製造業が集中している深圳周辺に多い。

 なぜ商社が公板を設計して売り出したかというと、設計能力の低い中国の製造業では、チップを買っても使いこなすことができなかったからだ。たとえばスマートフォンのCPUとして使われるクアルコムのSnapDragonシリーズを売るときに、スマートフォン用のマザーボードの状態まで仕上げた方が売り上げは伸びる。