佐々木:ブロックチェーンはポテンシャルから考えると、パブリック型で使うのが理想的です。例えば、金融分野にブロックチェーンを活用すると、中央銀行が要らなくなるという考えもあります。しかしながら、ポテンシャルを理想通りに発揮できるのか、明確な答えがあるわけでもありません。こうしたことから、今はプライベート型でブロックチェーンを使おうという意識が強まっています。プライベート型であれば、信頼をおけ、かつプロフェッショナルな参加者だけ、例えば現状のビジネスに対して非効率性を感じている取引先などと構成できるので、参加者数が限られていてもブロックチェーンの効果を得られるのではないかという考えです。

プライベート型が、ブロックチェーンのビジネス応用の中心になりそうですか。

佐々木:プライベート型での検討や実証実験にシフトしている状況といえます。ただし、企業経営者として、本当にプライベート型だけでよいか、という判断を下すのは簡単ではありません。スケーラビリティを狙うのであれば、パブリック型も念頭に置くべきでしょう。企業によって、判断が違ってくると思います。

 おそらく、多くの企業はまず、自分の取引先や関連業界の企業といった近場のビジネス領域でプライベート型を試し、どこでブロックチェーンを適用できるのかを検討した上で経済的にプラスになるのであれば、次のステップとして参加者の輪を段階的に広げてパブリック型に移行することを考えていると思われます。ブロックチェーンをビジネスに適用することを考える企業にとって、パブリック型とプライベート型の切り分けは重要になってきています。

 ただ、注意すべきことがあります。ブロックチェーンには、仲介者が要らなくなるとか、トレーサビリティに優れるとか、スマートコントラクトが可能といったプラスの面がある一方で、ブロックチェーンを使わずに通常のクライアントサーバーシステムを利用する場合に比べて「本当にプラスなのか」を考えねばなりません。ビジネスの内容によっては、ブロックチェーンを用いる方がデータ処理に時間がかかったり、電力を多く消費することになったりするといったことが起こり得ます。マイナス面を凌駕するだけのプラス面があるのかを考える必要があります。何が何でもブロックチェーンを使えばいいというわけではないのです。

ブロックチェーンを導入すれば、何でもうまくいくとは限らないということですね。決して、万能薬ではないと。

佐々木:その通りです。どれぐらいのベネフィットがあるか、実証実験を通じて各社は確認しているでしょう。例えば、「仲介者が不要になる」効果の高さを、実証実験で明確に実感できるかもしれません。一方で、トランザクションに要する時間が遅いために実ビジネスに合わないとか、電力消費が大きいとか、マイナス面も見えてくると思います。ブロックチェーンのベネフィットがどれくらいか、使える場所はどこかといった見通しを立てて実証実験し、どこくらいの経済効果があるのかを見積もらねばなりません。ブロックチェーンの実証実験に取り組んだ企業の中には、ブロックチェーンの潜在力を実感するところもあれば、期待したほどの効果が得られないところもあるはずです。今、こうしたことに、実証実験に踏み出した企業は気づきだしているところです。

ベネフィットを模索しながら実証実験を進めているというところなのですね。ブロックチェーンのユースケースには、どのようなものが想定されますか。

佐々木:ユースケースを分類すると、まず挙がるのが通貨/送金・決済です。そして、いわゆるスマートコントラクトの取引があります。貿易取引など、実証実験を始めるという話を最近よく聞きますので、関係する企業の多くがスマートコントラクトについてメリットを感じているのでしょう。この他、不動産やデジタルコンテンツといった所有権の移転についてもベネフィットがあるとみています。ブロックチェーンによる分散台帳を使うと、結構効率的に移転などを管理できるはずです。