EV(電気自動車)を1台製造して政府から補助金をもらい、その翌日にバッテリーを別のEVに移してまた補助金をもらう――。ある中国電池メーカー関係者は、中国で起こっている“いかさま”についてこう証言した。

 スマートフォンなどのバッテリーに使われる資源である「リチウム」が暴騰している。

 「どうなってんだって感じですよ」。昨年末、日系大手商社の担当者はこう漏らした。昨夏ごろから、リチウムの価格高騰が商社や電池部材メーカーなどの調達担当者の間で話題の中心になった。2015年夏から2016年末までの約1年半で、リチウムの取引価格は3.5倍に跳ね上がった。「既に異常値に突入している。年が明けてからも高止まりが続いている状況だ」。日系電池部材メーカー首脳はこう語る。

米アップルのアイフォーンにも使われているリチウムイオン電池。EVが普及すれば世界需要は何倍にもなる(写真=Bloomberg/GettyImages)

 このまま高騰が続けば、スマホやHV(ハイブリッド車)、パソコンなどリチウムイオンバッテリーを使う身近な商品に影響が出るのは必至だ。影響とは、一義的には価格の上昇、さらにはモノ自体が作れなくなってしまうことを指す。中国が2010年にレアアースの輸出を禁止したことで起こった「レアアースショック」を彷彿とさせる状況だ。

 日経ビジネス2月6日号の特集「元素が買えない 自国優先主義が招く危機」では、地球上に偏在する元素が囲い込まれるリスクを描いた。

 影響が大きいのがEV(電気自動車)の本格普及期を迎える自動車産業だ。日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車とホンダのそれぞれの対策を追加取材した。

 まずは、なぜリチウム価格が跳ね上がったのか、カラクリを解説しよう。