100円ショップ最大手「ダイソー」を運営する大創産業。国内で約3000店、海外で約1500店を展開し、2016年3月期の売上高は3950億円だ。同社はここで留まることなく今年もさらに出店を進める計画だ。消費者の節約志向を追い風に攻めの姿勢を打ち出している。

 日経ビジネスでは2016年1月9日号の特集「2017年紅白予測合戦」で、「異色企業家」の1人として大創産業の矢野博丈社長に2017年の小売業界、日本経済の動向についての予測を聞いた。

 インタビューの内容の前に、矢野社長との出会いの場面からお伝えしよう。

いきなり相手の度肝を抜く

 広島県東広島市にある大創産業の本社は広島空港からクルマで25分ほどの場所、酒どころとして知られる西条地域にある。社屋は1フロアが広く、壁などの仕切りがほとんどなく見渡せる。会議室には仕切りがあるが、透明なガラス張りになっている。

 取材で訪問し社屋に入ると、広報担当者が3階にある広い会議室に私たちを案内した。ここでインタビューするため、同行したカメラマンは照明などのセッティングを始め、矢野社長を待った。

 ところが矢野社長は2階にいて、まず社内を案内すると言う。そこですぐさま移動、広報担当者が社内の説明をしていると、背後からひょっこり姿を現した。

 会うなりニコニコして近づいてきて、隠し持っていたプラスチックのおもちゃの剣で「バサッ」と著者の腕を一刀両断。

大創産業の矢野博丈社長。手にしているのはダイソーで販売するパーティーグッズ。これで社員や取引先など会う人を楽しませていた(写真:橋本真宏、以下同)

 続いて名刺交換すると「ちょっといいですか」と著者の指をつかんで、ポケットからカッターナイフを取り出し「グサッ」。これもおもちゃでカッターナイフの柄の部分に半円形のへこみがあり、そこに指を通すとあたかも指を切断したかに見える。いずれもダイソーで販売しているパーティーグッズだ。

 漫画のキャラクター「ドラえもん」のようにポケットにはいろいろなパーティーグッズを隠し持っていて、ことあるごとに出しては相手を驚かせたり、笑わせたりする。

 社屋の2階はダイソーの製品開発と商談スペースで、テーブルが島状に並んでいる。各テーブルには多くの製品サンプルが並び、開発担当者と取引先の製造元の担当者が議論を交わしている。

 矢野社長はその中を練り歩くように進んでいき、気になる製品があると担当者を呼んで「カラーは1種類しかないの?」「これはいくら?」などと質問し、次々と指示を出す。

 取引先の担当者に対しては、著者と同様、いきなりパーティーグッズで驚かせる。そして必ずする質問が「あなた、何人(なに人)?」だ。

 これも半分冗談ではあるのだが実際、取引相手の国籍は多岐に渡る。短時間、社内を回っただけでも、韓国、中国、モンゴル、ブラジル人などが商談に来ていて、熱心にサンプル製品の説明をしてくる。中には日本語が堪能で、最初は日本人かと思ってしまうような人もいるので、「何人?」という質問が確かに必要な時もある。