「米のヒット甲子園」(主催:日経トレンディ、特別協賛:象印マホービン)は、消費者目線で今一番食べてほしいお米を選ぶ新米の味覚審査会。その最終審査会が11月21日にパレスホテル東京で開かれた。最終審査にノミネートされた9銘柄を、専門家7人が食べ比べ、「今一番食べてほしいお米」を選出。最後まで白熱した審査会を制したのは、環境に配慮した栽培方法も光る「石見高原ハーブ米きぬむすめ」だった。受賞に至るまでの審査会の様子をレポートする。

「米のヒット甲子園」の最終審査会の様子。都内のホテルで9つのノミネート米を食べ比べながら7人の審査委員が審査を行った
「米のヒット甲子園」の最終審査会の様子。都内のホテルで9つのノミネート米を食べ比べながら7人の審査委員が審査を行った

 今年で第4回目を迎える、全国の五ツ星お米マイスターが推薦したブランド米から、得票数で上位に選出された銘柄を対象に新米の味覚審査会を行う「米のヒット甲子園」(主催:日経トレンディ、特別協賛:象印マホービン)の最終審査会が11月21日に都内で行われた。最終審査会にノミネートされたブランドは以下の通り。

ブランド名 品 種 産 地
JA新砂川 特栽ゆめぴりか ゆめぴりか 北海道・空知産
青天の霹靂 青天の霹靂 青森県・田舎館産
銀河のしずく 銀河のしずく 岩手県・北上産
金色の風 金色の風 岩手県・一ノ関産
真室川特別栽培米 つや姫 つや姫 山形県・真室川産
新之助 新之助 新潟県・上越産
銀の朏(みかづき) いのちの壱 岐阜県・飛騨産
石見高原ハーブ米きぬむすめ きぬむすめ 島根県・邑智産
土佐天空の郷にこまる にこまる 高知県・本山産


 上記の9銘柄は86人の五ツ星お米マイスターが推薦した195品種の中から選出されたものであり、文字通り全国のお米のプロが「今年の食べてほしいお米」として推薦したものとなる。一般的に米のブランドの定番といえば「コシヒカリ」や「ササニシキ」「あきたこまち」といったものが思い浮かぶと思うが、現在様々な品種をもとに開発や改良が行われており、毎年のように新しい米のブランドが全国で登場している。同じ系列の米でも品種や作付けされた場所、その年の天候、栽培方法の違いで味が大きく左右される。五ツ星お米マイスターたちは、こうしたブランドごとの米の特性はもちろん、各ブランドの年ごとの発育状況や味を加味しつつ、その年を代表する米としてふさわしいものを選出している。

食の専門家、食通、研究員が審査

 最終審査会の審査委員は以下の7名。審査委員長を務める川崎氏は神戸市に店を構える米穀店「いづよね」の五ツ星お米マイスターだ。今年、初参加となる山下真司氏といえば、フジテレビ系列の「くいしん坊!万才」でリポーターを務めるなど食通の俳優として知られている。他にも食の分野で知見のある著名人や洋食分野の料理研究家などが審査委員として参加している。

【最終審査会のメンバー】
審査委員長 川崎恭雄氏(いづよね代表取締役)
フォーリンデブはっしー氏(グルメエンターテイナー)
山下真司氏(俳優)
小谷あゆみ氏(フリーアナウンサー)
小崎陽一氏(イタリア料理研究家)
里井真由美氏(フードジャーナリスト)
渡辺和博(日経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員)

審査委員長 川崎恭雄氏(いづよね代表取締役)
審査委員長 川崎恭雄氏(いづよね代表取締役)
フォーリンデブはっしー氏(グルメエンターテイナー)
フォーリンデブはっしー氏(グルメエンターテイナー)
山下真司氏(俳優)
山下真司氏(俳優)
小谷あゆみ氏(フリーアナウンサー)
小谷あゆみ氏(フリーアナウンサー)
小崎陽一氏(イタリア料理研究家)
小崎陽一氏(イタリア料理研究家)
里井真由美氏(フードジャーナリスト)
里井真由美氏(フードジャーナリスト)
渡辺和博(日経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員)
渡辺和博(日経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員)

 審査は9つの品種を3つのグループに分け、それぞれを1回ずつ合計3回の食べ比べが行われた。審査のポイントは主に味や風味、食感の3つを評価。特に食感に関しては個人によって好みが分かれるため、品種ごとの相対評価ではなく「硬さ」と「粘り」についての評価となっている。

審査の公平性を保つ厳密な炊飯

 審査の公平性と最適な炊きあがりの状態を保つために、洗米は洗米器を使用し、洗米用の水を入れて捨てる回数や、洗米のためのハンドルを回す回数などを厳密に合わせて行った。さらに、炊飯は象印マホービンの圧力IH炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜 NW-AT10」を使用。家庭でも再現できる方法を採りつつ、米のおいしさを一番引き出せるような炊飯を行った。

洗米は洗米器を使用し、ハンドルを回す回数なども厳密に行った
洗米は洗米器を使用し、ハンドルを回す回数なども厳密に行った
洗米後の重量も厳密にチェック
洗米後の重量も厳密にチェック
炊飯時の水の量も細かく調整
炊飯時の水の量も細かく調整
炊飯は象印マホービンの圧力IH炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜 NW-AT10」を使用
炊飯は象印マホービンの圧力IH炊飯ジャー「南部鉄器 極め羽釜 NW-AT10」を使用
炊きあがり後に状態を厳しくチェック
炊きあがり後に状態を厳しくチェック

審査委員たちが感覚を研ぎ澄ませて試食

 そして試食が始まった。皿の上にはノミネートされた3種類の品種と、審査基準として新潟県魚沼産のコシヒカリを基準米として盛り付けてある。基準米は審査の公平性を保つためのもので、食通の審査委員といえども複数の米を連続で食べると基準が分からなくなってくるため、3回の審査ごとに基準米を食べることで舌の味覚を一定に保つ役割がある。また、どの皿にどの品種が乗っているかは基準米以外は審査終了まで伏せられており、既存の知識や先入観で味が左右されないようにも配慮されている。

炊きあがった審査用のご飯が会場に運ばれてきた
炊きあがった審査用のご飯が会場に運ばれてきた
皿には審査用の3種類の品種と基準米として新潟県魚沼産のコシヒカリ(赤い印)が盛り付けてある
皿には審査用の3種類の品種と基準米として新潟県魚沼産のコシヒカリ(赤い印)が盛り付けてある

 審査会といっても堅苦しい雰囲気ではなく、各審査員が試食しながらコメントを出しつつ、合間は和やかな雰囲気で行われた。とはいえ、米を口に入れる瞬間や米を鼻に近づけて風味を確認する一瞬は、各審査委員ともに鋭い表情を見せており厳格な評価を下そうとする姿勢がうかがえた。品種や特性は違うが日本の米という点では大きな違いはなく、各審査委員はその微妙な違いをやや苦労しつつもしっかり把握していたようだ。各ブランドに対するコメントは以下のとおり。

JA新砂川 特栽ゆめぴりか(北海道・空知産)
「噛めば噛むほど甘みが出てくる。上品な香りがある」(小谷氏)
「主役にも脇役にも。麻婆豆腐などパンチの効いたおかずでも存在感を発揮」(はっしー氏)
「子どもの頃に食べたおいしいごはんに似ている。上品」(山下氏)

青天の霹靂(青森県・田舎館産)
「バランスがよく、どんなおかずにも合う」(小谷氏)
「さっぱりした印象。お茶漬けなどで食べるとよさそう」(渡辺)

銀河のしずく(岩手県・北上産)
「余韻が長い」(里井氏)
「弾力があっておにぎりにも肉料理にも合う。子どもの頃に食べたおいしいごはんを思い出す」(山下氏)

金色の風(岩手県・一ノ関産)
「粒は小振りで、繊細な味。米の味を崩さぬよう、出汁や塩などを使ったおかずと一緒にさっぱり食べたい」(小崎氏)
「味がまろやか」(里井氏)

真室川特別栽培米 つや姫(山形県・真室川産)
「粒がくっきりして甘みがある。和食向き」(里井氏)
「あっさりしているので、少し味の強い具材をのせる丼に向きそう」(渡辺)

新之助(新潟県・上越産)
「粒が大きく、ほどほどの硬さがあり、今回の審査米中、最も洋食に向く米。リゾットやパエリアにしたい」(小崎氏)
「非常に存在感が強いのに、くどさがないことに驚く。唐揚げなど主張の強いおかずにも負けない」(はっしー氏)

銀の朏(みかづき)(岐阜県・飛騨産)
「チーズリゾットなど味わいの強い素材と組み合わせたい」(小崎氏)
「非常に軟らかく、かつもっちり。甘く、味が濃い。香ばしいような香りも」(川崎氏)

石見高原ハーブ米きぬむすめ(島根県・邑智産)
「米離れがよいので、丼ものや焼き肉向き。タレや肉汁を受け止める包容力があり、一体感が出ておいしい」(はっしー氏)
「もっちりかつクリーミーな甘みがあり、一粒一粒がなめらかなオーラをまとっている。毎日食べたくなる味」(川崎氏)

土佐天空の郷にこまる(高知県・本山産)
「粒が立派で、噛みしめるとお米らしさが出てくる。冷めてから食べてもおいしい」(小谷氏)
「炊きたてはやや軟らかいが、冷めてくると一粒ごとの存在感が際立ち、甘みが出てくる。おむすびに」(川崎氏)

審査会といっても堅苦しい雰囲気はなく試食の合間は和やかな進行
審査会といっても堅苦しい雰囲気はなく試食の合間は和やかな進行
試食の瞬間はどの審査委員も真剣そのもの
試食の瞬間はどの審査委員も真剣そのもの
風味を確認する山下氏
風味を確認する山下氏
審査は専用の用紙に記入。「硬さ」と「粘り」についての評価をグラフに書き込み、味などの評は自由記入となっている
審査は専用の用紙に記入。「硬さ」と「粘り」についての評価をグラフに書き込み、味などの評は自由記入となっている
目をつぶって感覚を研ぎ澄ませるように風味を確認して試食するはっしー氏
目をつぶって感覚を研ぎ澄ませるように風味を確認して試食するはっしー氏

審査は紛糾!? そして決選投票へ

 審査はまず各審査委員が2品種ずつ大賞に値すると感じたブランドを選出した。「ゆめぴりか」が辛うじて最多投票を集めたが、他の票はばらけており、全員一致とはいかなかった。そこで、予定外ではあったが再度試食が行われることとなった。

 審査委員全員の討議の結果、第一回で最多得票の「ゆめぴりか」と次点の「銀の朏」、さらに「きぬむすめ」を再度試食することになった。今度は1票ずつの投票を実施。その結果、今度は「ゆめぴりか」がトップ、「きぬむすめ」が次点という結果になり、またもや審査結果は割れた。そこで「ここまで来たらさらに突き詰めた方がよい」という山下氏の発言もあり、「ゆめぴりか」と「きぬむすめ」で再々度食べ比べて決選投票を行うことになった。最初の試食からややご飯が冷めていることもあり、冷めた状態での味の判定も加味しようというわけだ。

 そして最終投票で「きぬむすめ」が「ゆめぴりか」を逆転、大賞米として選ばれた。各審査委員の見解として「どちらもおいしく味は甲乙付け難い」という意見で一致していた。決め手となったのは「石見高原ハーブ米きぬむすめ」が、ハーブを使った減農薬減肥料農法で作られているという点、コストパフォーマンスが高いという点、これからの品種として「きぬむすめ」を応援したいという気持ちを加味したことによるものだった。

 実際に筆者も試食してみたが、どの品種もそれぞれ特徴のあるおいしさがあり、今年の審査で票が割れるのもうなずけるものだった。今回は大賞米として「石見高原ハーブ米きぬむすめ」が選ばれているが、9種類のうちであれば好みや炊き方に合わせてどの品種を選んでも間違いはなさそうだ。

各品種の特性。個人で購入するならこの表を参考にして好みに合ったものを購入するとよいだろう
各品種の特性。個人で購入するならこの表を参考にして好みに合ったものを購入するとよいだろう
白熱した審査を終え、ほっとした表情の審査委員
白熱した審査を終え、ほっとした表情の審査委員
最終決選は審査委員が選んだ品種を紙に書いて同時に開票。「きぬむすめ」が5票、「ゆめぴりか」が2票となり、「きぬむすめ」が大賞米として選ばれた
最終決選は審査委員が選んだ品種を紙に書いて同時に開票。「きぬむすめ」が5票、「ゆめぴりか」が2票となり、「きぬむすめ」が大賞米として選ばれた

(文・写真/シバタススム)

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