米の生産量が最も多い都道府県をご存じだろうか? 答えは、予想通り、新潟県。では、生産された米の一等米比率が最も高い県は? 正解は長野県で、その比率は約96%。過去10年間で8度、全国1位に輝いている(農林水産省調べ。平成24年産と平成27年産では2位)

 米の等級区分で最高級にあたる一等米の比率が高いということは、“ハズレ”が少ない。つまり、長野県産米を購入すれば、安定したおいしさが期待できるというわけだ。そんな良質な米を生産する長野県から、新品種のオリジナル米「風さやか」が登場。長野県庁を訪ね、開発の舞台裏を探った。

高齢者でも育てやすい新品種を

 一等米比率が日本一の長野県。その理由は、信州の豊かな自然によるところが大きい。

 「全国トップクラスの日照時間による十分な光合成と、昼夜の大きな寒暖差によって、稲は養分をしっかりと蓄えます。さらに、日本アルプスがある長野県は全体的に標高が高く、病害虫の発生が少ない。そうした利点を生かし、古くから米作りが盛んに行われてきた。その伝統により、生産者の技術も高いと自負しています」(長野県農政部農業技術課・課長補兼農産振興係長の村山一善氏)

米づくりに向く環境を誇る長野県。昼と夜の温度差が大きく、健康で栄養豊富な稲が育ちやすい
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 長野県で栽培されてきた米の主要品種は、コシヒカリとあきたこまち。だが、これらの米に、地球温暖化の影響が出始めたという。

 「他県も同様だと思いますが、夏の暑さによる米の品質低下が少しずつ見られるようになりました。そこで、従来の品種よりも出穂期・成熟期が遅く、夏期の高温に強い米のニーズが高まりました」

 さらに、長野県ではもう一つ大きな問題を抱えていた。高齢化や後継者の不在により、田んぼを手放す農家が増えてきたことだ。

 「米づくりをやめた農地は、ほかの農家が購入または借り受けをします。その繰り返しによって、農家1軒の規模がどんどん大きくなっていきました。もしその農家が1品種の米しか栽培していなければ、短い日数で一気に収穫しなければなりません。1日にたくさんの米を収穫するのは、高齢者にはきついことです。でも、刈り入れの時期が異なる米を複数栽培していれば、収穫日を分散させることが可能です。1日の労働時間が抑えられます」

 農家が抱えるこうした問題を解決するために、長野県では平成12年度から長野県農事試験場にて、新品種を作るための人工交配を開始。平成20年度からは県内各地で栽培の現地試験を実施した。

 「候補になった品種は合計約2万株。その中から、1つのお米が選ばれ、平成25年3月に品種登録されました。長野県オリジナル米『風さやか』です」

長野県が作成した『風さやか』のパッケージイメージ
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『風さやか』の開発は平成12年度にスタート。13年の歳月をかけて開発が進められ、平成25年3月に品種登録された
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 「風さやか」は中晩生品種で、夏の暑さへの高い耐性が期待できる。さらに、稲の背丈が短く、耐倒伏性にも優れている。

 「今の農家は高齢の生産者が多い。丈夫で育てやすい米であることが重要です。『風さやか』は穂いもち病にも強く、農家から『手がかからず、育てやすい』という声が聞かれています」

コシヒカリやあきたこまちより収穫期が遅い『風さやか』。複数の米を栽培すれば、収穫のタイミングをずらすことができる。病気に強いという利点もある
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