中高生向けのプログラミング教育サービス「ライフイズテック」が注目を集めている。大学と連携して行うプログラミング学習の短期講座を始め、通学型のスクールも運営。東京、横浜、名古屋、大阪、福岡など各地に教室を広げている。ライフイズテックを設立した経緯と今後の日本におけるプログラミング教育の展望について、TREND EXPO 2016に登壇する同社代表取締役CEO・水野雄介氏に聞いた。
「教え子たちのITへの興味に刺激された」
――ライフイズテック設立のきっかけを教えてください。
水野雄介氏(以下、水野): 大学院に通いながら非常勤で高校の物理講師をしていたんですが、教え子たちの中にITに興味を持っている生徒がとても多かったんです。難関の男子校ということも影響していたと思いますが、45人のクラスで野球の話をしている生徒が4人いたとして、ゲームやパソコンの話をしている生徒は10人以上いました。
野球好きな生徒は野球部に入って自分でもプレーできますが、ゲーム好きな生徒は主に消費する側に回っていますよね。でも、ゲームが好きなら自分でも絶対に作ってみたいと思っているはず。そこで、プログラミングの技術、つまりゲームを作る技術を中学生・高校生に教えることで、教育に改革を起こせないかと考え、起業しました。
――2011年に初めてのキャンプ(短期講座)を開催。反響はいかがでしたか?
水野: 最初のキャンプはスタッフが7人に対して参加者は3人という状況で(笑)。僕らの取り組みに対して「うまくいかないんじゃないの?」という方もいましたが、IT業界からは人材の育成につながるのではないかと、期待をもって歓迎されました。その後のあゆみは順調で、現在までに約2万人の中高生が受講しています。
――具体的にはどのようなコースがあるのですか?
水野: ライフイズテックでは短期間で集中的に学ぶキャンプと、1年間週に1回通学するスクールの2つを運営しています。それぞれiPhoneアプリを開発するコースやゲームプログラミングコースなどがありますが、スクールではオリジナルのアプリをApp Storeで販売するなど「1年間で作品をひとつリリースする」のを目標としています。
「ウォルト・ディズニーのような子どもを育てたい」
――今、エンジニアが不足していますよね。中高生自身も、プログラミング学習が将来の就職に役立つと考えているのでしょうか。
水野: もしかしたら親はそう考えているかもしれませんが、子どもたちは純粋に楽しんでいますよ。水泳を習ったら背筋が鍛えられる、なんて思いながらスイミングスクールに通っている幼稚園児はいないですよね(笑)。それと同じだと思います。
――水野さんご自身も、エンジニアを育てているつもりではない?
水野: 僕は、子どもたちにウォルト・ディズニーのような創造力を持った人になってほしいんです。ディズニーは大恐慌時代に、アニメーション映画というイノベーションで多くの人を幸せにしました。テクノロジーというツールを学ぶことで、自分の夢や考えを実現できること。それを多くの子どもたちに知ってもらいたいんです。
――ITが自己実現のツールになるということですね。
水野: そうですね。中高生の思考力はほぼ大人と一緒です。数学や英語の勉強に関しては、大人以上にできる子も多い。そういう子どもたちは、プログラミングにはまるとものすごく伸びるんです。プロのエンジニアになるかどうかは別として、さまざまな選択肢を提供していきたいです。
――最近、プログラミング教育がバズワードとなっていますが。
水野: 僕個人としては、バズというか、一過性のブームとは捉えていません。確かに今はブームなように言われますが、そのうち必ず定着する。日本人はモノ作りに向いていますから。
かつて「読み書きそろばん」と言ったように、これからは「読み書きプログラミング」の時代が来るのではないでしょうか。
(文/樋口可奈子、写真/シバタススム)