イヤホンとしての音質は……

 今回レビューの最大のテーマは、AirPodsの「イヤホン音質」はどれだけの実力を持っているのか調べること。オーディオ評論家である筆者が、じっくり聴き込んだ。

 主に聴いた音源は、ロックバンド「RADWIMPS」の『前前前世(movie ver.)』のハイレゾ版。ハイレゾ音源で聴いているためオンキョーのアプリ「HF Player」を利用しているが、ワイヤレスで再生する際には48kHzの標準音源へとコンバートされる。

iPhone 7と組み合わせたAirPodsで音質を検証した
[画像のクリックで拡大表示]

 まず、AirPodsの音質の第一印象は「中域に厚みを振ってパワーを出したサウンド」といったところだ。

 例えば『前前前世(movie ver.)』のエレキギターのメロディーラインはクリアだし、低音にも心地よい厚みがある。男性ボーカルの声も埋もれず、声の表現力も文句なし。ただし、ドラムの音が加わるところでセパレーションが雑になり、サビの「君の前前前世から僕は...」の下りに入るとバンド演奏も潰れ気味と、万能ではない。

 他のジャンルの音楽でも、メロディーラインはくっきりと聴きやすいのだが、クラシック、ジャズなどのアコースティックな音源の表現力は大味だ。

 しかし、J-POPをはじめとしたボーカル曲を聴くなら「この音がしっかり聞こえて欲しい」というツボを押さえているので、音楽を聴いた際の印象はすこぶるよい。

 さて、このAirPodsのサウンド、基本的な音質のチューニングはiPhoneに付属しているイヤホン「EarPods」と同じだ。

 AirPodsとEarPods(iPhone 7付属の「EarPods with Lightning Connector」)で聴き比べてみると、AirPodsのほうが声の質感・鮮明さで劣ったり、エレキギターの鮮鋭感ある音が少し丸まっていたりという形で、バンド演奏の再現力が落ちている印象があった。

 それでも、気軽に音楽を聴くスタイルでは「AirPodsの音質は付属イヤホンと同じくらい」という評価に落ち着くだろう。

AirPodsとiPhone 7付属のEarPodsとで音質を比較した
[画像のクリックで拡大表示]

他のイヤホンと比べると?

 それではAirPodsは、他のイヤホンと比べて、どの程度の実力なのだろうか。筆者が所有している有線タイプのイヤホンと聴き比べてみた。なおiPhone 7と有線イヤホンとの接続は、iPhone 7付属の変換アダプター「Lightning to 3.5mm Headphone Jack Adapter」を利用している。

比較したイヤホンは、左から順にSkullCanyd「INK'D」、MUIX「IX3000」、ソフトバンクセレクション「SE-5000HR」、SHURE「SE215」+SAEC製ケーブル、BOSE「SoundTrue Ultra in-ear headphones」、オーディオテクニカ「ATH-CKR10」
[画像のクリックで拡大表示]

 さまざまなイヤホンと聴き比べていくと、安価なモデルと比べてみてもAirPodsのサウンドには足りない箇所があるのが分かった。

 例えば、SkullCanyd「INK'D」(約2000円)ほどの低音再現性はないし、MUIXの「IX3000」(約4000円)と比べても、エレキギターの音のキレや、高域のシンバルの金属音の情報量で負ける。より高価な製品であるソフトバンクセレクション「SE-5000HR」(約8000円)、SHUREの「SE215」(約1万円)は、AirPodsの弱点だったドラムの音や演奏の情報量までも巧みに鳴らす。

 こうした有線イヤホンと比べても、AirPodsの音質はやはり付属イヤホンのEarPods(イヤホンのみの価格は3200円)相当と呼ぶのが妥当だろう。

どう評価すべき?

 AirPodsの問題点は、構造的に、耳穴を密閉する一般的なカナル型イヤホンよりも音漏れしやすいこと。混み合う場所で大音量で聞くと、他人にも聞こえる可能性があるし、カナル型に比べて遮音性が低いため、電車の中などでは外の音も聞こえやすい。ただ、自宅・室内などで使うならば問題になりにくく、紛失の心配も少ない。

 一方、AirPodsの心地よい厚みのある音質は、意外にも、似通った音質を持つイヤホンは少ない。また「歌声やメロディがハッキリと聞き取れる」「きつい音や嫌な音が聞こえない」という面でよくできている。

 筆者の評価は別にして、音質は好みの要素が大きいこともあり、1万円クラスの有線イヤホンと比べても「AirPodsのほうがいい」と思う人もいるはずだ。ワイヤレスのため音質が損なわれがちな同価格帯のワイヤレスイヤホンと比べると、さらに有利だろう。

 一般的に、iPhoneの付属イヤホン(EarPods)に「高音質」を求める人は少ない。だが付属イヤホンも、価格の割には音質面で非常に良くできたイヤホンだった。それが完全ワイヤレスになって装着感や機能性が大きく高まったと考えると、音質を評価した後でも「1万6800円という価格は、かなりお買い得なのでは」と評価している。

(文/折原一也)