2017年1月上旬に米国・ラスベガスで開催された家電見本市「CES 2017」。世界中のメディア・プレス関係者が集まる大手メーカーのプレスカンファレンスのなかで最大動員数を誇るイベントが、ソニーのプレスカンファレンスだ。

 平井一夫社長兼CEO自ら登壇し、今年一年の注目プロダクトを語ったプレスカンファレンスの内容を基に、ソニーの2017年の「3つの戦略」を解説していこう。

「CES 2017」のソニープレスカンファレンス
「CES 2017」のソニープレスカンファレンス
平井一夫社長兼CEOが今年の戦略を語った
平井一夫社長兼CEOが今年の戦略を語った

ソニーの成長戦略は「HDR」

 ソニーのプレスカンファレンスで中心となったキーワードが、映像に実際に記録する輝度の幅と薄型テレビに表示する最大輝度も両方拡大する「HDR」(High Dynamic Range、ハイダイナミックレンジ)だった。

 薄型テレビの映像輝度を拡大し映像表現の幅を広げる「HDR」は、元をたどればハリウッドの映画制作からスタートしている、テレビを高画質化する一大トレンドだ(関連記事は「4Kはもう時代遅れ? テレビの新しい高画質『HDR』とは何なのか」)。映画製作用シネマカメラや放送機材といった業務用機器から薄型テレビまで、制作現場から家庭まですべてを自社製品で固められるソニーとしては最も得意とする領域というわけだ。

 HDR戦略の目玉となったプロダクトは、ついに登場したソニーの有機ELテレビ「BRAVIA OLED A1E」シリーズと、液晶テレビ「BRAVIA」の新モデルとなる「X93E」シリーズ。いずれもソニーのHDR時代の高画質プロセッサ「X1 Extreme」を搭載している。

キーワードとして掲げられた「High Dynamic Range(HDR)」
キーワードとして掲げられた「High Dynamic Range(HDR)」
ソニーのNo.1注目プロダクトである「BRAVIA OLED A1E」
ソニーのNo.1注目プロダクトである「BRAVIA OLED A1E」
液晶テレビの中核モデル「X93E」
液晶テレビの中核モデル「X93E」

 HDRを巡っては2016年11月に発売した「PS4 Pro」もゲームのHDR出力に対応しているほか、ソニーとして初めてのUltraHD Blu-rayプレーヤー「UBP-X800」でも対応。また映像配信のNetflixやAmazonのコンテンツもHDRに対応している。

 映像トレンドとしてのHDRが一気に加速していく2017年は、ソニーが本領を発揮する一年となるだろう。

ソニー初のUltraHD Blu-rayプレーヤー「UBP-X800」
ソニー初のUltraHD Blu-rayプレーヤー「UBP-X800」

完全ワイヤレスイヤホンにも参入へ

 また、プレスカンファレンスで平井社長が力を込めて発信していたのはオーディオ製品群だ。

 新製品ではホームシアター用のサウンドバー「HT-ST5000」を発表した。新機能としてDolbyAtmosの立体音響にも対応している。そしてハイレゾオーディオのウォークマン、ヘッドホン、ヘッドホンアンプ等からなるハイエンドオーディオ製品群「Signature」シリーズやワイヤレス・ノイズキャンセルヘッドホンの「MDR-1000X」がヒットしていることも改めて発表された。

 さらに、ソニーが高い技術を持つノイズキャンセル対応イヤホンについては、アップル「AirPods」が人気を博している完全ワイヤレス型イヤホンをCESで参考出展した。最新のトレンドにも積極的に追随していく見込みだ。

今年のプレスカンファレンスで、オーディオ製品としてで真っ先に紹介されたサウンドバー「HT-ST5000」
今年のプレスカンファレンスで、オーディオ製品としてで真っ先に紹介されたサウンドバー「HT-ST5000」
16年秋に発売されたポータブルオーディオ製品はいずれもヒットしている
16年秋に発売されたポータブルオーディオ製品はいずれもヒットしている
初披露となるノイズキャンセル対応の完全ワイヤレス型イヤホン(参考出展)
初披露となるノイズキャンセル対応の完全ワイヤレス型イヤホン(参考出展)

 ただし、米国におけるソニーのオーディオブランドのイメージは日本のそれと比べると弱く、また、ハイレゾ戦略の浸透に苦戦しているのが現状だ。

 すでに米国のテレビ事業はソニーにとって利益を生む事業へと成長しているため、米国のディーラーとの間で「テレビの次はオーディオ」と話をしている段階だというのが平井社長の認識だ。日本では製品の評価は高いだけに、米国市場をオーディオでどう攻略していくかが、17年のカギとなりそうだ。

目玉は「グーグル新製品との連携」

 CESで出展されたソニー製品のなかで、新しい切り口だったのが「Google Home」と連携した製品だ。

 今年のCESの一大トレンドとしては、スピーカーを入り口としてインターネットにつながる音声アシスタントサービス。グーグル「Google Home」やアマゾン「Alexa」といったクラウド型AIと接続する製品がブレイク直前だ。

 ソニーでも同社製ワイヤレススピーカーやAndroid TV搭載テレビがGoogle Homeと連携。展示では、Google Homeと連携して音声操作で音楽を流したり、写真を表示したりというデモを行っていた。

 今後、どのような形で同社製の音声アシスタント製品が登場するのかも含めて、今年の最も注目すべきトレンドだろう。

ソニーによる「Google Home」と対応製品のデモ
ソニーによる「Google Home」と対応製品のデモ
液晶テレビや同社製サウンドバーへの再生を、Google Homeを通じて音声で指示できる
液晶テレビや同社製サウンドバーへの再生を、Google Homeを通じて音声で指示できる

(文/折原一也)

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