ネットを通じて不特定多数の個人(支援者)から資金を募るクラウドファンディング。この連載では、2013年にクラウドランディング「Makuake」のサービスを開始したサイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈さんが、クラウドファンディングの最前線を語る。今回は、クラウドファンディングが変革を与えたビジネスモデル、特に飲食業界・店舗(ヘアサロン・コワーキングスペース等)、ホテル(ゲストハウス含)等をはじめとするサービス業界に与えたビジネスモデルの変革について実例を交えながら紹介する。

 企業やサービス事業者がクラウドファンディングを成功させることは、今後事業をさらに発展させる重要な要素となります。

 クラウドファンディングを成功させる秘訣は色々とありますが、中でも大きなカギは、「リターン」設計にあります。 リターンとは、クラウドファンディングの支援者に、支援金の「対価」として提供する製品やサービス、体験のことです。まず、このリターンを上手に設計し、クラウドファンディングを成功させた事業の事例、その成功の秘訣を紹介しましょう。

 リターンに特徴を打ち出し、成功している例は飲食・サービス業に多くみられます。例えば、会員制馬肉専門店の「ローストホース」です。2014年8月にMakuakeで支援者を募集し、その後も絶大な人気と話題性を持つ繁盛店となっています。

会員制馬肉専門店「ローストホース」が掲載した、クラウドファンディングの募集画面。600万円を超える支援金が集まった
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 ローストホースが成功した理由は、リターンを「会員権」に設定したところにあります。同店で食事ができるのは、会員と会員の同伴者だけです。この会員になる権利をリターンとして設定し、500人を超える支援者を集めました。

 リターンの設定方法は多岐に渡ります。同じ飲食店でも、特定メニューを提供する、割引券をお渡しするなど、みなさん工夫しています。どんなやり方を選ぶにしても、ポイントになるのは、支援者を「リピートしてくれる顧客にする」ことです。クラウドファンディング最大のメリットは、支援者=「まだお店もできていないのに、お金を払ってくれる人」を確保できることにあります。このとても優良な顧客候補の人たちを、クラウドファンディング成功後も、いかにして「囲い込む」か。その有効な手法の一つが、ローストホースの場合は会員制でした。

ローストホースのコース料理の一品「馬肉のお刺身」。オープン時、コース料理は6500円(飲み放題付き)で提供(現在の料金は異なる)
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 会員権は、「特別な顧客」というプレミアム感を演出しています。クラウドファンディングで支援者になったから得られる特別な権利、これをローストホースは上手にアピールしました。消費者心理をうまくつかんだマーケティング手法と言えます。

 このところMakuakeでは、飲食店のクラウドファンディングを重点的にチェックするという支援者が増えてきています。「飲食関連のクラウドファンディングを見つけたら、すべて支援している」という人もいるほどです。

 この例が代表するように、クラウドファンディングのリターンとして、人数や商品を限定してサービスを提供するビジネスモデルが成り立ち始めています。