ネットを通じて不特定多数の個人(支援者)から資金を募るクラウドファンディング。この連載では、2013年にクラウドランディング「Makuake」のサービスを開始したサイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈さんが、クラウドファンディングの最前線を語る。今回は、クラウドファンディング実施後のサポート、特にその中でも流通販路との連携、金融機関との提携について紹介する。

 クラウドファンディングは、インターネット上でのサービスです。しかしMakuakeでは2015年の夏から、リアルな店舗を使って、Makuakeから誕生した製品・サービスの展示や販売といった取り組みを始めています。

 そもそもMakuakeのようなクラウドファンディングでは、支援を募っているプロダクトやサービスを消費者が実際に手に取って確認することができません。そのため、これまでご紹介してきたように、Webページには製品・サービスの詳細情報を可能な限り盛り込み、製品の魅力や特徴、留意点をしっかり伝えるようにしています。

 そういったなか2015年ごろから、オンラインでの情報発信力強化だけでなく、「実際に製品を手に取って、支援するかどうか検討できる機会も必要」という意見が聞こえてくるようになりました。これが、「Makuakeのリアルショップ展開」開始のきっかけです。

 リアルショップ展開が最初に実現したのは伊勢丹新宿本店でした。「世の中にはまだない新しくて面白い製品をどこよりも早く取り扱える、バイヤーが日々追いかけている手法とは違ったアプローチで新しい製品情報が手に入る」というところに三越伊勢丹ホールディングスが興味を持ってくださったのがきかっけで、2015年8月から、「Makuake」にてクラウドファンディングを実施中の製品やサービスの展示を開始。展示ブースは常設となっており、現在も伊勢丹新宿本店の本館2階に、Makuakeで支援を募っている製品を展示しています。

伊勢丹新宿本店にある、Makuakeの製品展示スペース(画像提供:Makuake、以下同じ)
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 展示する製品は、Makuakeのプロジェクト実行者が提供しています。インターネット上だけでなく、リアルな場においてもプロジェクトを多くの人に知って頂く機会につながるということで、プロジェクト実行者からは好評を頂いております。

 同時に展示できる製品数が4つまでと限られているので、希望出展者のなかから選んで、これまで50種類以上の製品を2~5週間展示してきました。販売していないので、「売れ行き」といった判断材料はないのですが、「興味を持つ顧客は多い」と三越伊勢丹からは評価いただいており、展示をした製品の中からいくつか伊勢丹新宿本店にて取り扱いが決まるという事例も出てきています。

 取扱製品になったのは、「アバテルノ」という木製の腕時計(税別2万1800円、2015年12月の伊勢丹新宿本店販売当時)と、スマートフォンで撮影した子供の画像や動画を離れた家にあるテレビに表示するインターネットサービス「まごチャンネル」(1年間の製品保証がついた通常モデルは、税別3万9800円、2016年6月伊勢丹新宿本店販売当時)。アバテルノは2015年のクリスマスキャンペーン時に伊勢丹新宿本店の独占販売商品として店頭に並び、想定を上回る売れ行きとなりました。まごチャンネルも同様、想定以上の売れ行きとなり店舗も実行者も手応えを感じています。

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Makuakeで実施した「アバテルノ」のクラウドファンディング(左)、「まごチャンネル」は、「孫といつでも会える」をコンセプトにしたサービスだ(右)

 これらの展示取り組みが好調だったため、2016年7月27日〜8月2日に、伊勢丹新宿本店のイベントスペースで”音楽”をテーマとしたイベントを実施。クラウドファンディング実施中または終了後の製品を展示・販売しました。「Makuake」の歴代最高額5300万円を誇るA4サイズのオールインワンDJシステム「GO DJ Plus」をDJが実際に使うイベントも開催。展示の取り組みだけでなく、伊勢丹新宿本店とは今後も新たな展開を仕掛ける予定です。

 リアルな店舗での製品展開を“オンラインビジネスの自己否定”と考える人もいますが、Makuakeでは、個々のプロジェクトのさらなる発展に向けて必要な“新しいツール”ととらえています。クラウドファンディングで支援を募るプロジェクト実行者は、オンラインで販売することだけを目標にしているのではありません。自分たちが作った製品やサービスが市場に広く受け入れられ、ビジネスとして成功することを目指しています。その飛躍のきっかけとして、リアルショップでの展示や販売は、大きな一歩と言えるのです。