ネットを通じて不特定多数の個人(支援者)から資金を募るクラウドファンディング。ベンチャー企業の資金調達だけでなく、大手メーカーが新製品のマーケティングに活用する例も増えている。この連載では、「Makuake」を運営するサイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈さんが、クラウドファンディングの最前線を語る。今回は、業務提携している城北信用金庫のコミュニケーション開発事業部 パブリックリレーションズグループ/クリエイティブグループ・越野理惠氏と対談。Makuakeが金融機関と連携する背景やそれぞれのメリット、さらには利用者の反応などに迫る。

━━業務連携に至った経緯は?

坊垣佳奈氏(以下、坊垣): Makuakeが金融機関との連携に関心を持ったのは、カスタムオーダー時計を販売する「Knot」のクラウドファンディングを実施したときでした。

 Knotはクラウドファンディングでは大成功を収めましたが、創業1期目のベンチャー企業で実績も少なかったことから、クラウドファンディング前の金融機関の融資では思うように支援を受けられなかったそうです。Knotの代表である遠藤弘満氏は前職がウォッチプロデューサーで製品知識は豊富。それでも、起業した段階で金融機関から融資を獲得するのは困難でした。そのような背景もあり、遠藤氏は資金調達の別手段として、Makuakeでクラウドファンディングに挑戦したという経緯がありました。

「Makuake」を運営するサイバーエージェント・クラウドファンディング取締役の坊垣佳奈さん
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 その後、Knotは合計2度のクラウドファンディングに成功し、海外進出を果たすほどのメーカーに成長。今では、「Makuake」での実績もきっかけとなり金融機関からは多くの融資が舞い込むようになったそうです。

 この経緯を目の当たりにしたとき、「Makuakeが金融機関と上手く連携していけば、クラウドファンディングを融資の判断材料として活用してもらえるのではないか」という感覚を得ました。その流れが、城北信用金庫さんとのご縁につながったわけです。

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Makuakeで実施した、Knotのクラウドファンディング。2回とも大成功となった

越野理惠氏(以下、越野): 当金庫がMakuakeさんと連携したのは2015年4月23日にスタートしたプロジェクト「NACORD(ナコード)」からとなります。話し合いを始めたのは、それより前の2014年11月頃です。その背景には、政府の成長戦略である「日本再興戦略2013」において、クラウドファンディングの有効活用が資金調達のひとつとして検討されたことが挙げられます。簡単に言うと、「リスクマネーの供給にクラウドファンディングを活用する」という話になります。

城北信用金庫のコミュニケーション開発事業部 パブリックリレーションズグループ/クリエイティブグループ・越野理惠さん
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坊垣:確かに、Makuakeにもそういった話が金融庁からありました。

越野: 金融庁としては、クラウドファンディングが企業の創業や商品開発の資金供給に役に立つと考えたわけです。そこで、当初は投資型のクラウドファンディングの規制緩和を議論していたのですが、その後、Makuakeさんのような購入型のクラウドファンディングは金融機関の融資と住み分けしやすいなど、その有用性を認識したようです。実際、当金庫としても、創業期や商品開発の段階では購入型クラウドファンディングが適しており、事業の運営や拡大には金融機関の融資の方が適しています。購入型クラウドファンディングの方が便利で、協業しやすいと感じていました。

坊垣: 創業時にはどの企業もそれなりの資金が必要となるので、融資のタイミングで見れば、クラウドファンディングと金融機関が重なる部分はあるでしょう。しかし、購入型のクラウドファンディングは支援者へ商品やサービスを提供するのが義務=目標で、お金を返す必要がありません。そこが、利用者のハードルを大きく下げていると思います。

 融資のファーストステップとして、金融機関が対応しづらい領域を購入型のクラウドファンディングがカバーできるのは、いい補完関係にあると思います。互いに「何かしらの連携を持ちたい」という思惑はあったわけですから、そういった意味では相思相愛だったともいえそうです。

越野: そうですね。それぞれにニーズがあったからこそ、当金庫の「NACORD」も誕生したわけですから。

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東京都北区にある城北信用金庫本社(左)、右はNACORDのトップ画面
■変更履歴
記事中に誤りがありました。初出時、坊垣氏を坊野氏と記載しているところがありました。また、Makuakeが提携している金融機関数を「20以上」としていましたが、正しくは「40以上」です。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2017/4/18 13:10]