「ホリプロ保育園」えんちょーの安田美香です。今回は、絵本作家ヨシタケシンスケ氏のインタビューをお届けしています。前編では、幼少期から絵本作家になるまでを伺いました(「絵本作家・ヨシタケシンスケが「哲学的」と言われるワケ」 ) 。後編ではこの春から小学6年生と1年生になる息子さんを持つ2児のパパであるヨシタケ氏に、ご自身の子育てについて伺います。

ヨシタケシンスケ氏。1973年神奈川県生まれ。絵本作家。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常の風景を独自の視点で切り取ったスケッチ集やイラストなど、多岐にわたり作品を発表。2013年に絵本『りんごかもしれない』を出版。初のオリジナル絵本となった本作品で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞を受賞。『りゆうがあります』で、第8回MOE絵本屋さん大賞第1位に。『もうぬげない』は、ふたたび第9回MOE絵本屋さん大賞1位となったほか、2017年にはボローニャ・ラガッツィ賞[フィクション部門]特別賞を受賞するなど、国内外から注目を集めている。この春から小学6年生と1年生になる息子さんを持つ父親でもある。
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「ああいう親にはなりたくない」という気持ちが自分を律する

安田美香氏(以下、安田): ヨシタケさんの絵本づくりに関する考え方や人生観は、ご自身の子育てにどのように生かされていますか。

ヨシタケシンスケ氏(以下、ヨシタケ): 自分が子どものころに親に言われて嫌だったことは、自分の子に言わないようにしています。幼少期に父親に言われて嫌だったことは今でも鮮明に覚えていますから。

 ただ、親として最も良くないのは、「分かりすぎてしまうこと」だと思うんです。本来、親というものは頭ごなしに叱ったり何かを押し付ける役目があると思います。でも、僕は子どもの気持ちが分かりすぎて何も言えなくなってしまう。うちの子は僕ではなく、別の人間だから、本当は本心を分かるはずもないのですが……。わが家の場合、僕がつい甘やかしてしまう代わりに妻が頭ごなしに叱ってくれるので(笑)、その点はバランスが取れています。

安田: ヨシタケさんのご両親はいかがでしたか。

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ヨシタケ: 母は「好きなことをやりなさい」と言ってくれる人で、父は母の方針に一切口出しをしない人でした。ただ、父の叱り方はセンスがなかった。自分の考えを押し付けてくるので、父とは仲良くできませんでした。おそらく、子どもと接する時間が少なく、どうやって子どもを褒めたらいいのかが分からなかったのでしょう。父が悪気なく言った言葉に深く傷つくこともありました。

 ただ、今思うと、「あんな人にはなりたくない」と憎む気持ちがその人を律する力にもなる。親は憎まれることも必要です。「これは違う」「やっぱり嫌だ」と子どもに気づかせるためには、何かを押し付けて価値観の軸となるものを作っていくことも親の仕事の1つなのではないでしょうか。押し付けられたものが好きかもしれないし、嫌いかもしれない。でも、それが「与える」ということなのではと今は思います。子どもの頃は嫌だったけれど、確かに父は僕の価値観を作り上げてくれた。父には感謝の言葉しかありません。