従来の概念を覆すデザイン

中込光輝さん(以下、中込): 扇風機も最初の製品からかなり進化しています。

小口: 三脚のような折りたたみの脚を備えたFシリーズはかなり独創的ですね。

中込: 扇風機は昭和のはじめから形が変わっていません。座敷に座った状態で使われていたため、操作部は台座にある。なぜか椅子の時代になった平成になっても、そのままの製品が多い。そこで、「kamomefan」では椅子に座ったままでも操作しやすいよう高い位置に操作部を付けました。加えて、収納しやすいよう軽量化や小型化にもこだわっています。

小口: 扇風機は意外とオフシーズンの収納に困りますからね。収納といえば、この平べったくなる「DCフォールディングファン」は画期的ですね。これで首振り機能も備えているとは。

中込: おそらく6.6cmは世界最薄で、押し入れやちょっとした隙間に収納できます。これは部内のプロダクトデザイナーのアイデアです。「これはいい、やろう!」となったのですが、実際に製品にするには難儀しました。

 扇風機は吸気と排気、そして風道の組み合わせで風の流れを作ります。薄くすると風が作りづらい。最初は、風が全然出ないところからのスタートです。結果、羽根とモーターを一体化させた特殊な羽根を作ることで風量を確保しました。

小口: 「kamomefan」の羽根とは違うんですね?

中込: より薄くて風が出る羽根を独自に開発しました。今年からは新たに開発した13枚羽根でより風量を大きくしました。まだまだ新しい羽根も開発中です。

折りたたみ時に薄さ6.6cmになる「DCフォールディングファン」
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国内第5位のテレビメーカー

小口: デザインといえば、ドウシシャさんらしいなと思ったのがレトロな液晶テレビです。ガチャガチャ回せるチャンネルなど、懐かしさにグッと来るものがありますが、これって意識高いデザイナーなら絶対手がけないでしょう(笑)。どういうきっかけだったのでしょう。

目黒弘泰さん(以下、目黒): テレビについては、1980年代にいわゆるテレビデオ(ビデオ一体型テレビ)を発売して以降変遷を重ね、今は液晶テレビを扱っています(「サンスイ」ブランドとしても展開している)。国内の販売台数では、シャープさん、東芝さん、パナソニックさん、ソニーさんの次、5位に付けています。

小口: それは知りませんでした。

目黒: 販売金額ベースでは(順位は)変わってきますが……。というのも、少し小さめの、2台目、3台目のテレビがターゲットだからです。2011年の地デジバブルのときは、約100万台、全体の約10%のシェアがありました。需要の先食いをしたため、その後テレビが売れなくなりまして、そんなときに第2事業本部のd-designに刺激を受けて企画したのが、昭和テイストのテレビだったのです。

小口: レトロデザインの家電は昔からありますが、画面サイズと価格で選ばれる液晶テレビでは珍しい。まさにニッチ市場です。

目黒: 実はドウシシャはブラウン管テレビを最後まで売り続けた会社でして。それもニッチ市場になるんですけど、ホームセンターでは重宝されていました。

小口: それは、どういう理由で?

目黒: 液晶テレビが出始めたとき、年配の方には、受け入れられなかった人たちも多かったのです。大手のメーカーがブラウン管テレビから撤退していく中でシェアを獲得していった。地デジ対応のブラウン管テレビも作りましたから。

小口: すごい(笑)。ブラウン管のメリットは特にないと思うんですが、形から来る安心感なんでしょうか。レトロ液晶テレビのデザインは1970年代テイストですが。

目黒: テレビが売れなくなったとき、お客様目線で使い方を想像したのですが、和室って全国にどのぐらいあるんだろうという話になりました。調べてみると、50坪以上の家には、99%和室がある。都内のマンションでも、新築では減少していますが、昔の物件では必ず1室は和室になっている。和室に黒い液晶テレビってどうなのと、ひらめいたのが昔のブラウン管のような液晶テレビなのです。

小口: どのぐらい売れています?

目黒: 発売間もないので売り上げが1億円足らずです。

小口: どんな人が買っているのでしょう。

目黒: データはないのですが、年配の方には懐かしさを、若い方には新鮮なデザインと感じてもらえているようです。小売店さんに注文される1点買いのお客さんも多い。いくつか問い合わせがあったのがインバウンド向けの旅館です。外国人のお客様を迎えるにあたり和室に置いてみたいという相談もありました。

小口: 和室に合うテレビという意味で狙い通りですね。

目黒: 第2弾としては、アメリカンテイスト、カラーも赤とか水色など、もっとニッチに向けた製品を出す予定です。

レトロ液晶テレビ「20型 ハイビジョンLED液晶テレビ VT203-BR」
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液晶の裏側は収納スペースに。チャンネルのある前面を開くと、レコーダーなどの設置スペースがある
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まとめ
 前回はニッチ市場が得意と話していたドウシシャ。今回は一転して扇風機と液晶テレビというメジャーな市場での戦い方を示してくれた。

 扇風機については、オープンイノベーション。これは最近よく聞く言葉で、ほかの企業や研究機関と組んで新しい商品を作ることだ。ドウシシャは、外部の企業と組むことで、製品に“物語性”を付加。他社との競争を優位にする戦略を採用した。

 一方、液晶テレビは大手メーカーがひしめき、かつ価格競争の激しい分野だが、ここでもニッチ市場を作り出そうとしている点は興味深い。しかもデザインで勝負しているのだが、そのモチーフが昭和のブラウン管テレビというのが意識が低く、ドウシシャらしいと感じた。

(ドウシシャの秘密[3]に続く)

小口覺(おぐち・さとる)

IT&家電ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱中。